先天性股関節脱臼 子供の歩行について

はじめに

先天性股関節脱臼（発育性股関節形成不全）は、乳幼児期の股関節の発育が不十分な状態を指し、適切な治療とリハビリにより多くは良好な経過をたどります。しかし、成長とともに歩行が始まると、股関節周囲だけでなく全身の動きに特徴が現れることがあります。今回は、先天性股関節脱臼と歩行の特徴、そして早期からの柔軟性ケアの重要性について解説します。

1．先天性股関節脱臼と歩行の特徴：股関節の動き（外転位など）

先天性股関節脱臼では、乳児期に外転位での固定（パブリック装具など）が行われることが多く、これにより股関節は安定方向へ誘導されます。一方で、歩行が始まる頃には以下のような特徴がみられる場合があります。

股関節外転位が強く出る歩行歩行中に股関節をやや外に開いた状態で歩くことが多く、これは股関節周囲の筋緊張や関節の安定性に関連しています。
股関節の伸展・回旋可動域の制限装具固定の影響や発育段階のバランスにより、股関節の伸展や内旋がやや制限される子もいます。
骨盤の左右への揺れ（トレンデレンブルグ傾向）中殿筋が十分に働かない場合、片脚立脚時に骨盤が左右に大きく動きやすくなります。

こうした特徴は、必ずしもすべての子供に見られるものではありませんが、股関節の安定性や筋力・柔軟性と深く関係しています。

2．先天性股関節脱臼と歩行の特徴：全身の動き（脊柱回旋不足・足関節背屈不足）

歩行は全身運動であり、股関節だけで成立するものではありません。先天性股関節脱臼を経験した子供では以下のような全身的な特徴がみられることがあります。

脊柱（特に胸椎）の回旋不足股関節の動きが制限されると、歩行時の体幹のねじり運動が少なくなることがあります。
本来、歩行には骨盤・腰椎・胸椎の協調した回旋が必要ですが、この回旋が不足すると上半身の振りが小さく、歩幅も伸びにくくなります。
足関節背屈（つま先を上げる動き）の不足股関節の動きが制限された場合、代償的に足首の可動域が制限されることがあります。
足関節背屈が不足すると、歩行時に膝が伸び切らず、歩幅が狭くなる・すり足になる・つまずきやすい、といった特徴が出ることがあります。
全身の協調運動が硬くなる体幹や足首が十分に動かないことで、歩行全体が「固い」「ぎこちない」と感じられる場合があります。

これらは成長過程で自然に改善することもありますが、適切なケアを行うことでよりスムーズな歩行獲得につながります。

3．早期から脊柱の柔軟性や足首の柔軟性を確保することが大切

先天性股関節脱臼の既往がある子供では、股関節そのもののフォローも重要ですが、同時に以下の点を早期からケアしていくことが推奨されます。

● 脊柱（特に胸椎）の柔軟性を高める

体幹のひねり遊び（寝返りの促し、ボール遊びなど）
背中を丸めたり反らしたりする運動
呼吸運動を促すアプローチ（肋骨の可動性アップ）

● 足関節の背屈可動域を確保する

ふくらはぎ（腓腹筋・ヒラメ筋）の軽いストレッチ
しゃがみ遊び
つま先立ち・かかと歩きなどのバランス遊び

● 全身の協調性を整える

四つ這い移動やバランス遊び
リズム遊び（音楽に合わせて歩く・跳ねる）
発達段階に合わせた自然な運動体験の確保

これらを行うことで、股関節だけに頼らないスムーズな歩行の獲得につながります。

オステオパシーでは全身の機能連鎖を整えるため、股関節・脊柱・足関節の動きを総合的に調整できる点も特徴です。

おわりに

先天性股関節脱臼の治療後は、多くの子が正常に歩行を獲得します。しかし、股関節だけでなく、脊柱や足関節といった全身の柔軟性・可動性を早期から整えることで、より自然でスムーズな歩行を身につけることができます。

気になる症状や歩行のクセがある場合は、専門家に相談しながら早めにサポートを行うことが重要です。

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