はじめに
「踵が痛くて運動ができない」「朝起きると足の裏が痛い」。小学校高学年から中学生にかけて多く見られるこの訴えの正体は、シーバー病(踵骨骨端症)である可能性があります。
理学療法士として多くの成長期のお子さんと接する中で、シーバー病は単なる「成長痛」や「使いすぎ」ではなく、身体全体の成長パターンと動作連鎖の問題が深く関わっていることを実感しています。
オステオパシーの観点から見ると、「身体は一つのユニット」という基本原理に基づき、踵の痛みも全身の構造と機能の統合的な問題として捉えることができます。
今回は、シーバー病の原因と予後について科学的根拠に基づいて整理し、オステオパシーが提供できる自然治癒力を引き出すアプローチについてお話しします。
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1. シーバー病の病態生理学的理解
成長期における骨端軟骨の特性
シーバー病は成長期の踵骨(踵の骨)の骨端軟骨に繰り返しストレスが加わることで生じる炎症性疾患であることが分かります。
骨端軟骨の脆弱性
- Type II collagenが豊富で機械的強度が低い
- 血管供給が限定的で修復能力が限られる
- 成長ホルモンやIGF-1の影響を強く受ける
アキレス腱付着部での力学的ストレス 踵骨骨端部は、アキレス腱からの牽引力と足底筋膜からの牽引力が交差する部位であり、tensile stressとcompressive stressの両方が作用する複雑な力学的環境にあります。
2. シーバー病の予後と経過
自然経過
シーバー病は、骨端線閉鎖とともに自然に症状が軽快することが多く、一般的には保存的アプローチ(活動制限、ストレッチング、足底板療法など)で改善が期待できます。
典型的な経過
- 急性期:2-4週間の炎症期
- 亜急性期:4-12週間の修復期
- 慢性期:症状遷延例では数ヶ月から1年以上
予後を左右する要因
良好な予後を示す因子
- 早期の適切な対応
- 全身的なバイオメカニクスの改善
- 段階的な活動復帰
予後不良因子
- 根本的な運動連鎖の問題の未解決
- 不適切な早期復帰
- 全身的な姿勢・動作パターンの未改善
理学療法士として多くの症例を経験する中で、局所的なアプローチのみでは再発を繰り返すケースが少なくないことを実感しています。
当院でできること
1. 構造調整
全身アライメントの評価と改善
- 姿勢分析と動作評価
- 骨盤-脊柱-頭蓋の統合的調整
- 下肢運動連鎖の最適化
足部機能の回復
- 足関節可動域の改善
- 足底アーチ機能の回復
- 歩行パターンの再教育
2. 癒着の解放
筋膜系の統合的調整
- Superficial Back Line の緊張緩和
- Deep Front Line の機能回復
- 局所的な筋膜制限の解除
関節可動性の改善
- 足根骨間関節の調整
- 膝関節-股関節の機能改善
- 脊柱全体の可動性向上
3. セルフケア指導
段階的な運動プログラム
- 急性期:疼痛管理と炎症軽減
- 回復期:可動域改善と筋力回復
- 復帰期:スポーツ特異的動作の再教育
日常生活指導
- 適切な靴の選択
- 歩行・走行フォームの改善
- ホームエクササイズの指導
予防的アプローチ
- 成長期に応じた運動強度の調整
- 定期的なセルフチェック方法
- 早期発見・早期対応の重要性
終わりに
シーバー病の痛みは、「成長期だから仕方ない」と見過ごされがちですが、足だけを見ていると本当の原因を見逃してしまうことも多いのが現実です。
オステオパシーでは、これらの症状を局所的な問題として捉えるのではなく、身体全体の成長過程における調和の変化として理解します。
「治る力は、あなたの中にある」
この信念のもと、成長期のお子さんが本来持つ自然治癒力と適応能力を最大限に引き出すお手伝いをさせていただきます。
全身の構造を評価し、姿勢や神経系の働き、筋膜ラインの緊張までを統合的に整えることで、痛みの軽減だけでなく、再発予防や運動パフォーマンスの改善にもつながります。
当院では、理学療法士としての専門知識とオステオパシーの全人的アプローチを統合し、一人ひとりのお子さんの成長段階と特性に応じた個別の施術プログラムを提供しています。
「踵が痛い」「運動を休んでもすぐに再発する」そんなお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
科学的根拠に基づいた評価と、お子さんの健やかな成長を見据えた包括的なサポートで、安心できる成長期をお手伝いいたします。
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