ATNRと原子反射統合不全

はじめに.

原始反射(Primitive Reflex)は、赤ちゃんが生まれ持つ自動的な運動パターンであり、脳や神経系が発達するための重要なステップです。その中でも ATNR(非対称性緊張性頸反射) は、姿勢制御・眼球運動・手の協調動作に深く関わる反射で、乳児期の発達に欠かせません。

しかし、この反射が本来の時期に統合されず残存すると、学習・姿勢・動作のぎこちなさなどに影響することがあります。本記事では、ATNRと原子反射統合不全の関係をわかりやすくまとめます。


1. ATNRとは(特徴・役割・統合時期)

● 特徴

ATNR(Asymmetrical Tonic Neck Reflex:非対称性緊張性頸反射)は、

頭を向けた側の手足は伸展し、反対側は屈曲する という特徴を持つ反射です。

赤ちゃんが首を動かすと、まるでフェンシングの姿勢のようになるため「フェンシング反射」とも呼ばれます。

● 主な役割

  • 体の左右差を認識するための基礎づくり
  • 手と目(Hand-eye coordination)の発達に関与
  • 姿勢反射・保護反射へつながる神経回路の準備
  • 寝返りや体幹回旋の初期パターンに関与

つまり、ATNRは体の左右を区別し、動きの分化を促すための「最初のプログラム」のひとつです。

● 統合時期

通常、ATNRは

生後4〜6か月ごろにに統合(消失) するとされています。

統合されることで、赤ちゃんは意識的で滑らかな手の操作、寝返り、ハイハイへと発達していきます。


2. 原子反射統合不全とは

原子反射統合不全とは、本来、乳児期に統合されるはずの反射が 幼児期・学童期・成人期まで残存してしまう状態 を指します。

反射が統合されない原因には以下が考えられます:

  • 分娩時のストレス(吸引・急速分娩・帝王切開など)
  • 発達段階での姿勢環境(うつ伏せ時間が少ない、姿勢保持不足)
  • 感覚統合の未発達
  • 神経系の不均衡や脳幹レベルの発達遅延

原始反射が残存すると、体は無意識にその反射パターンに引っ張られ、

姿勢制御の困難、集中力低下、目と手の協調性の問題、運動のぎこちなさ といった症状につながることがあります。


3. ATNRの統合不全と“ぎこちない動き”

ATNRが統合されず残っている場合、以下のような特徴が見られることがあります。

● 身体動作のぎこちなさ

  • ボールのキャッチや投げる動作に苦手さ
  • 走るときに腕振りが左右で不自然
  • 体幹がうまく固定できず、ふらつきが出やすい

● 姿勢・歩行への影響

  • 頭を向けた方向に体全体が引っ張られる
  • 座位で姿勢が崩れやすく、斜め座り・横座りになりやすい
  • 歩くときに腕や脚の協調が乱れ、ぎこちないステップになる

● 学習面・視覚面の問題

  • 書字の姿勢が安定せず、字が曲がる
  • ノートを見る・黒板を見るなど視線移動が苦手
  • 手と目の協調が弱く、細かい作業が困難

これは、ATNRが残っていることで

首の回旋 → 手足の筋緊張の左右差 → 動作の非対称性

という連動が無意識に起こってしまうためです。


終わりに.

ATNRは、赤ちゃんの発達を支える大切な原始反射ですが、統合が遅れたり残存すると、

姿勢・歩行・協調運動・学習面にまで影響を及ぼすことがあります。

もし「動きがぎこちない」「姿勢が崩れやすい」「左右差が強い」といった悩みがある場合、原始反射の残存が背景に関わっている可能性もあります。

京都オステオパシーセンター2Fでは、身体の構造と神経発達の両面から評価し、個々に合ったアプローチを行っています。


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