はじめに
股関節は、体幹と下肢をつなぐ中枢の可動関節であり、歩行や立位姿勢の安定に欠かせません。その安定性を支える重要な要素の一つが「靱帯」です。
変形性股関節症(OA hip)では、関節軟骨や骨形態の変化だけでなく、靱帯の性質や張力の変化も関節可動域・疼痛・姿勢制御に影響します。今回は、靱帯の解剖学的特徴と、徒手療法における靱帯への影響について整理します。
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1.股関節周囲の靱帯の解剖学的特徴
股関節を取り巻く関節包は厚く強靱で、以下の3つの靱帯によって補強されています。
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腸骨大腿靱帯(Iliofemoral ligament:ILFL)
前面に位置し、寛骨臼前下棘から大腿骨大転子間線に付着。人体最強の靱帯とも呼ばれ、股関節の伸展・外旋を制限します。 -
恥骨大腿靱帯(Pubofemoral ligament:PFL)
下前方に位置し、恥骨上枝から関節包に入り込み、外転および伸展を制限します。 -
坐骨大腿靱帯(Ischiofemoral ligament:IFL)
後方に位置し、坐骨から大腿骨頸部へ向かい、内旋を制限。後方安定性に寄与します。
これらの靱帯は螺旋状に配列し、屈曲時に弛緩し、伸展時には巻きつくように緊張して骨頭を臼蓋に引き寄せます。この構造的特性が「受動的安定性」を生み出しています。
2.股関節周囲の靱帯の動的安定性について
股関節の安定は靱帯だけでなく、筋群との連動によっても支えられています。
腸腰筋は関節包前面および腸骨大腿靱帯の深層線維と連結し、屈曲初期に靱帯張力を微調整します。
また、小臀筋(特に前部線維)は関節包前上方と連続しており、立脚中期に骨頭を臼蓋へ求心化させます。
このように靱帯と筋は機能的連鎖を形成し、静的安定性と動的安定性が統合的に働くことで、関節運動の滑らかさが保たれています。
3.変形性股関節症における靱帯の特徴
変形性股関節症では、長期的な機械的ストレスや骨頭形態の変化により、靱帯は肥厚・線維化・弾性低下を起こします。
特に腸骨大腿靱帯の短縮は、伸展可動域の制限や骨盤前傾の固定化を招き、歩行時の推進力低下や腰部過伸展を誘発することがあります。
一方で、病期によっては靱帯が弛緩し、関節包内圧が上昇しやすくなるケースもあり、症例ごとに靱帯の「緊張—弛緩バランス」を評価することが重要です。
4.徒手的操作による靱帯への影響
徒手療法では、靱帯組織の粘弾性特性を理解した上での介入が求められます。
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Toe Regionの通過:靱帯は初期伸長域(toe region)で伸展しやすく、一定のテンションを超えると急激に抵抗が増します。
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クリープ現象(Creep):一定の力を持続的に加えると、時間経過とともに組織が徐々に伸びる特性。過度な持続牽引は微小損傷(microfissure)を生じるリスクがあります。
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マイクロフィッシャー(Micro-fissure):繰り返しストレスにより微細な線維断裂が生じ、組織反応として炎症や線維化を起こす可能性があります。
したがって、徒手操作では「靱帯を伸ばす」よりも、「靱帯の張力バランスを整える」「滑走性を回復させる」ことを目的とするのが望ましいと考えられます。
終わりに
変形性股関節症の治療では、筋力や可動域だけでなく、靱帯の状態評価が見落とされがちです。
靱帯は単なる制限因子ではなく、股関節の安定性を守る重要な調整器でもあります。
徒手療法では、解剖的配列・動的連鎖・組織力学を理解し、靱帯に優しく働きかけるアプローチが、痛みの軽減と機能回復に繋がります。
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