70代女性の変形性膝関節症のケース

70代女性の変形性膝関節症のケース|変形性膝関節症

変形性膝関節症で「膝が最後まで伸びない」「立つと片方の膝だけ曲がってしまう」という状態が長く続き、お悩みの方は少なくありません。

京都・中京区の京都オステオパシーセンターOQ 2Fでは、膝の曲がった状態に適応した全身の歪みと、慢性炎症による膝まわりの組織変化の両面からアプローチします。

理学療法士・健康科学修士・発達ケア・アドバイザーの大村颯太が、長引く膝の痛みに対する全身と膝局所の評価・施術・セルフケアをご提供しています。

本記事では、5〜6年膝が伸びない状態が続いた70代女性のケースをもとに、膝だけでも全身だけでもない改善の視点をお伝えします。

目次

変形性膝関節症で膝が伸びない理由|膝だけでは改善しなかった70代女性のケース

京都オステオパシーセンター2F 大村颯太

膝が伸びない状態が長く続いている方へ

「膝が痛い」だけでなく、「膝が最後まで伸びない」「正座ができない」「立つと片方の膝だけ曲がってしまう」。

変形性膝関節症の方をみていると、こうした状態で悩まれている方は少なくありません。特に70代以降になると、階段、外出、床からの立ち上がり、旅行や趣味など、生活の中でできることが少しずつ制限されてしまうことがあります。

これは本当に辛いことだと思います。

今回ご紹介するのは、5〜6年前から膝の痛みが続き、膝が伸びきらない状態になっていた70代女性のケースです。いくつかの治療院に通ってもなかなか改善せず、当院へ来られました。

※個人が特定されないよう、一部内容は調整しています。

曲がった膝に身体全体が合わせてしまうことがあります

来院時、この方は右膝が最後まで伸びきらず、正座も難しい状態でした。立った姿勢では右膝が曲がったままになっていて、左右の脚の長さが違うようにも見えました。

ただ、実際に骨の長さが変わっているというより、膝が曲がった状態に身体全体が合わせてしまっているような印象でした。

確認していくと、右膝が伸びない状態が長く続いたことで、骨盤は右側へ下がり、ねじれが生じていました。さらに背骨や胸郭にも、その姿勢に合わせた歪みが出ていました。

膝は膝だけで動いているわけではありません。

膝が伸びないと、足首や股関節の使い方が変わります。骨盤の高さも変わります。骨盤が傾くと、背骨や胸郭もそれに合わせてバランスを取ります。

これは運動連鎖として考えると自然です。身体は一つの場所だけで動いているのではなく、いろいろな部位がつながって動いています。

短期間であれば、身体は元に戻りやすいこともあります。でも、5年、6年と膝を伸ばしきらない状態が続くと、身体はその姿勢を「いつもの状態」として覚えてしまいます。

患者さん向けに言えば、身体が曲がった膝の状態を記憶しているような状態です。もう少し専門的に言うと、筋膜、関節包、筋肉、神経筋制御、姿勢制御が、その姿勢に適応してしまっていると考えられます。

だから、膝だけを一時的に伸ばしても、骨盤や背骨、胸郭が曲がった膝に合わせたままだと、また膝が曲がる方向へ戻りやすくなります。

膝そのものにも慢性炎症による変化が起きていました

ただし、このケースは「膝ではなく全身を整えれば良い」という単純な話でもありませんでした。

たしかに、骨盤や背骨、胸郭の歪みを整えることは必要でした。身体全体が右膝の曲がった状態に適応していたからです。

でも、それだけでは十分ではありませんでした。

5〜6年という長い期間、膝の痛みが続いていたことで、膝そのものの組織にも変化が起きていたからです。

変形性膝関節症では、軟骨のすり減りだけが注目されやすいですが、実際には滑膜、関節包、脂肪体、筋膜、靭帯、皮下組織、静脈やリンパの流れも関係しています。

膝に機械的なストレスが加わり続けると、滑膜炎や関節包周囲の炎症が起こります。炎症が長く続くと、炎症性サイトカインが持続し、線維芽細胞が活性化します。

線維芽細胞は、コラーゲンなどの細胞外基質を作る細胞です。本来は修復のために必要な反応ですが、炎症が長期化すると、コラーゲンが過剰に沈着し、組織が硬くなっていきます。これが線維化です。

線維化が進むと、関節包、滑膜、脂肪体、筋膜、皮下組織の滑走性が落ちます。つまり、組織同士の滑りが悪くなり、癒着したような状態になります。

この方の場合も、膝まわりの組織が全体的に硬く、分厚くなっている印象がありました。見た目にも膝が少し太く見えるような状態です。

これは、単なる腫れだけではなく、慢性炎症による線維化、むくみ、組織間の癒着、静脈やリンパ還流の低下が重なっていた可能性があります。

そのため、施術では膝局所も細かく確認しました。腸脛靭帯、中間広筋、膝蓋上嚢、膝蓋下脂肪体、ハムストリングス、腓腹筋、内側側副靭帯と骨膜の間など、どこで組織の滑りが悪くなっているのかを一つひとつ見ていきました。

全身を見るオステオパシーの視点と、膝局所を細かく分解して評価する理学療法士としての視点。その両方が必要だったケースだと思います。

ご自宅で膝を伸ばしやすくするためのセルフケア

膝が伸びにくい方にとって、いきなり強く膝を伸ばそうとすることはおすすめしません。長年痛みが続いている膝は、組織が敏感になっていたり、炎症が残っていたりすることがあるからです。

まずは、仰向けで膝の下に薄いタオルを入れ、太ももの前側に軽く力を入れてみてください。膝裏をタオルへ近づけるようなイメージです。5秒ほど軽く力を入れて、ゆっくり緩めます。これを5〜10回ほど行います。

次に、足首をゆっくり上下に動かします。つま先を上げたり下げたりする動きを10〜20回ほど繰り返します。ふくらはぎの動きは、静脈やリンパの流れにも関係するため、膝裏の張りやむくみがある方には大切です。

立つときは、膝だけをまっすぐにしようとしすぎず、足裏、膝、股関節、骨盤の向きをそろえる意識を持ってみてください。鏡の前で、片方の膝だけ曲がっていないか、骨盤が左右どちらかに下がっていないかを見るだけでも気づきがあります。

ただ、痛みを我慢して行う必要はありません。気持ちよく伸びる範囲、または少し抵抗を感じる程度にとどめてください。

ただし、2週間ほど続けても変化が乏しい場合や、痛み・しびれが強くなる場合、ご自身で続けることに不安がある場合は、無理に続けず専門家にご相談ください。背景に別の問題が隠れていることもあり、適切な評価のうえで方針を組み直したほうが回復が早いケースもあります。

2週間ほど続けても変化が乏しい場合や、痛み・しびれが強くなる場合は、無理に続けず一度ご相談ください。LINEでお気軽にご相談いただけます。

膝だけでも全身だけでもなく、両方の関係を見ることが大切です

正直に言うと、このケースは1回、2回で大きく変わるような状態ではありませんでした。

70代という年齢、5〜6年という痛みの期間、膝まわりの線維化、そして全身の姿勢適応を考えると、身体が変わるには時間が必要でした。

無理に一度で膝を伸ばそうとすると、かえって炎症が強くなったり、身体が防御してしまうこともあります。そのため、施術では身体が受け入れられる範囲を確認しながら、少しずつ進めていきました。

身体全体の歪みを整え、膝まわりの線維化や癒着を少しずつ解放していく。その積み重ねです。

20回ほど施術を重ねる中で、膝の伸びが少しずつ出てきました。現在では、立ったときの左右差もかなり少なくなり、以前よりも自然に立てる状態になってきています。

もちろん、すべての方が同じように変化するわけではありません。年齢、痛みの期間、変形の程度、生活習慣、炎症の状態によって経過は異なります。

ただ、このケースは私にとっても非常に学びの多いケースでした。

膝が痛いから膝だけを見る。あるいは、膝が痛いから全身だけを見る。どちらか一方だけでは足りないことがあります。

長引いた変形性膝関節症では、身体全体が曲がった膝の状態に適応していることがあります。その一方で、膝そのものにも慢性炎症による線維化や癒着が残っていることがあります。

この両方を丁寧に見ていくことが、改善の糸口になるケースがあります。

年齢を重ねたから仕方がない。変形性膝関節症だから、もう変わらない。そう思って諦めている方も少なくありません。

でも、身体を丁寧に見ていくと、まだできることが残されているケースもあります。

同じように、長年の膝の痛みや、膝が伸びないことで悩んでいる方の力に、少しでもなれればと思っています。

京都オステオパシーセンター2F 大村颯太

参考文献

  • Hunter, D. J., & Bierma-Zeinstra, S. (2019). Osteoarthritis. The Lancet, 393(10182), 1745–1759. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)30417-9
  • Loeser, R. F., Goldring, S. R., Scanzello, C. R., & Goldring, M. B. (2012). Osteoarthritis: A disease of the joint as an organ. Arthritis & Rheumatism, 64(6), 1697–1707. https://doi.org/10.1002/art.34453
  • Scanzello, C. R., & Goldring, S. R. (2012). The role of synovitis in osteoarthritis pathogenesis. Bone, 51(2), 249–257. https://doi.org/10.1016/j.bone.2012.02.012
  • Brandt, K. D., Dieppe, P., & Radin, E. (2009). Etiopathogenesis of osteoarthritis. Medical Clinics of North America, 93(1), 1–24. https://doi.org/10.1016/j.mcna.2008.08.009

よくあるご質問

Q. 変形性膝関節症で膝が伸びない場合、膝だけを治療すれば改善しますか?

A. 膝だけを伸ばそうとしても、骨盤や背骨が曲がった膝に合わせて適応していると、また元に戻りやすくなります。京都オステオパシーセンター2Fでは、全身の姿勢適応と膝局所の組織変化の両方を確認しながら施術を進めます。

Q. 長年膝が伸びない状態が続いていますが、今からでも改善できる可能性はありますか?

A. 年齢や痛みの期間によって個人差はありますが、身体を丁寧に評価するとまだ変化の可能性が残されているケースもあります。まずは一度ご相談いただき、現在の状態を確認させてください。

Q. 膝の曲がりや痛みは、自宅でのセルフケアで良くなりますか?

A. 仰向けで膝の下にタオルを入れ、太ももの前側に軽く力を入れる運動や、足首のポンプ運動は有用です。ただし、2週間ほど続けて変化が乏しい場合や痛みが強くなる場合は、無理に続けず当院へご相談ください。

Q. 施術はどのくらいの頻度・期間が必要ですか?

A. 長年の膝の痛みや組織の変化がある場合、身体が変わるには時間が必要です。記事のケースでは20回ほど施術を重ねる中で膝の伸びが少しずつ出てきました。状態に応じて適切な頻度をご提案します。

Q. 初めての相談はどのように申し込めばよいですか?

A. まずはLINEからお気軽にご連絡ください。その後、当院のWEB予約フォームからご予約いただくか、お電話でも受け付けております。

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この記事を書いた人

大村颯太
・理学療法士
・健康科学修士
・発達ケア・アドバイザー上級

Sota Omura
・Physiotherapist
・Master of Health Science
・JEFPA Certified Foot Care Advisor
・Developmental Care Advisor

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