歩き方は、膝だけで決まるものではありません。足がどこを向くか、土踏まずがどのタイミングで落ちるか、骨盤や体幹がどう重心を運ぶか。その小さな積み重ねで、一歩の印象は変わってきます。
今回の方は、両膝の人工関節の手術後から歩き方が気になっており、「もっときれいに歩きたい」という希望がありました。膝の配列だけでなく、足部アーチと足首の使い方を含めて確認した一例です。
理学療法士・健康科学修士・発達ケア・アドバイザーの大村颯太が、今回の一例をもとにお伝えします。※変化のあらわれ方には個人差があります。
今回のケースから見えてきたこと
今回確認したのは、約10年前に両膝人工関節置換術を受けた方の歩行です。ご本人としては、足が外側へ向きやすいこと、歩き方がきれいに見えにくいことが気になっていました。
歩行を見てみると、両足が外側を向きやすく、接地から荷重にかけて足部アーチが低下しやすい状態でした。膝の配列だけでなく、足部が地面をどう受け止めているかが重要なポイントでした。
局所だけでは説明しにくい背景
人工関節の手術後は、どうしても膝そのものに目が向きやすくなります。もちろん膝の配列は大切です。ただ、歩行では足首・足部・股関節・骨盤・体幹が連動して動くため、膝だけを見ても全体像がつかみにくいことがあります。
今回も、膝関節の外旋方向の配列や人工関節の挿入角度の影響は考えられました。一方で、足関節や足部の配列不良は、手術前から長く続いていた可能性もあります。そこで、足部アーチをどう保つか、足首がどの方向へ動きやすいか、全身の重心移動がどうなっているかを一緒に見ていきました。
評価で着目したポイント
まず見たのは、歩行中の足先の向きです。両足が外側へ向くことで、足部の内側アーチが保ちにくくなり、接地のたびに土踏まずが落ちるような使い方になっていました。
次に、膝と足部の向きがどのくらい一致しているかを確認しました。膝の向きに対して足部が外側へ逃げると、歩くたびに力の伝わり方が分散しやすくなります。
最後に、足だけで頑張っていないかも見ています。足部アーチを保つには、足の筋肉だけでなく、骨盤や体幹が重心をうまく運ぶことも必要です。
今回行ったアプローチ
施術では、足部アーチを支える後脛骨筋や長趾屈筋などを確認し、必要な範囲で緊張をゆるめました。足の内側が働きやすい状態をつくるためです。
その後、距腿関節やショパール関節といった、足首から足部にかけての関節の動きを調整しました。足部の細かい関節が硬いままだと、歩行時にアーチを保つ選択肢が少なくなってしまいます。
最後は、足をまっすぐ出す練習です。ただ「つま先を内へ向けましょう」と伝えるのではなく、足部アーチを保ちながら、体全体を前へ運ぶ感覚を一緒に確認しました。
ビフォーアフター(動画と写真で見る変化)
▲ 施術前後の変化(動画)
3回程度の施術と歩行指導で、足をまっすぐ出す感覚が出てきました。歩行中の土踏まずの低下も、以前より抑えやすくなっています。
ここで大切なのは、「一度で完成」ではなく、体が新しい歩き方を覚えていく過程として見ることです。人工関節の条件や長年のクセもあるため、今後も計測しながら、無理のない範囲で歩行を整えていきます。※変化には個人差があり、同じ結果をお約束するものではありません。
日常で意識したいセルフケア
今回は、ショートフットエクササイズをお伝えしました。足の指をぎゅっと丸める運動ではなく、足裏の3点を床につけたまま、土踏まずをやさしく引き上げる練習です。
最初は座った状態で、親指の付け根・小指の付け根・かかとの接地を感じます。そのまま、指に力を入れすぎず、足の内側が少し持ち上がる感覚を探します。
慣れてきたら、立った状態や歩き出しの一歩目でも同じ感覚を確認します。うまくできる日とできない日があっても大丈夫です。歩き方は、少しずつ体に覚えさせていくものです。
この変化をどう考えるか
今回の変化は、膝そのものが大きく変わったというより、足部アーチを保つ感覚と、足を前へ出すときの全身の協調が少し整理された結果だと考えています。
人工関節後の歩行では、変えられる部分と変えにくい部分があります。だからこそ、構造的な条件を無視せず、その中でどこまで歩きやすくできるかを見極めることが大切です。
足の向きやアーチの低下は、見た目だけの問題ではありません。歩きやすさ、疲れやすさ、膝や足首への負担にも関係します。細かいところですが、ここを丁寧に見る価値はあると感じています。
OQでご相談いただきたい方へ
OQでは、歩行動画や姿勢・動作の確認を通して、膝だけでなく足部・股関節・体幹のつながりを見ています。
両膝人工関節後の歩き方が気になる方、足が外へ向きやすい方、土踏まずがつぶれる感じがある方は、一度ご相談ください。今の体の条件を大切にしながら、できる範囲で歩き方を整えていきます。
参考文献
- Kim, J. H., et al. (2023). Increased ankle pain after total knee arthroplasty is associated with a preoperative lateralized gait and talar tilt, but not with ankle laxity or the range of motion of the subtalar joint.
- Uhlrich, S. D., et al. (2025). Personalised gait retraining for medial compartment knee osteoarthritis: a randomised controlled trial.
- Semple, R., Murley, G. S., Woodburn, J., & Turner, D. E. (2009). Tibialis posterior in health and disease: a review of structure and function with specific reference to electromyographic studies.

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