こんにちは、副院長の大村颯太です。
「お尻の上のほうが鈍く痛い」「腰の横のくぼみ付近が重だるい」「立ち上がりや寝返りのときにズキッとくる」——こうした症状は、仙腸関節の問題であることがあります。
腰痛全体の約15〜25%は仙腸関節に由来するとも言われており、「ヘルニアじゃないと言われたのに腰が痛い」という方の中にこのケースが含まれています。
仙腸関節とは何か
仙腸関節は、脊柱の土台である仙骨と骨盤の腸骨をつなぐ関節です。左右に1つずつあり、骨盤後面のくぼみ(ミカエリス菱形窩の付近)にあたります。
この関節は数ミリ程度しか動きませんが、歩行・立位・座位でかかる荷重を分散させる重要な役割を担っています。靭帯・筋肉で強固に支えられている一方、妊娠・出産・外傷・姿勢の偏りで動きが乱れると痛みの原因になります。
仙腸関節痛の特徴的なサイン
仙腸関節の痛みは、次のような状況で出やすいのが特徴です。
- 長時間の座位・立位の後に痛みが増す
- 寝返りや立ち上がりのときにズキッと痛む
- 片側のお尻・腰の横・鼠径部に集中する
- 歩き始めは痛いが、少し動くと和らぐ
- 片脚での体重負荷(片足立ち・階段)で痛みが出る
坐骨神経痛と異なり、脚のしびれや脱力を伴うことは少ないです(ただし、お尻から太ももにかけての放散痛は出ることがあります)。
産後に多い理由
産後の腰・骨盤痛の多くに仙腸関節が関与しています。妊娠中に分泌されるリラキシンというホルモンは靭帯を弛緩させ、出産時に骨盤が開きやすくするために働きます。しかし、このゆるみが産後も続くと仙腸関節が不安定になり、荷重のたびに痛みが生じます。
「産後から腰が痛い」「抱っこすると骨盤が痛い」という症状は、仙腸関節不安定性のサインであることが多いです。授乳中の非対称な姿勢・育児動作(前屈・抱き上げ)も症状を強めます。
骨盤・腰椎・股関節との連鎖
仙腸関節の問題は単独ではなく、周囲との連鎖の中で生じます。
多裂筋・腹横筋・骨盤底筋が正常に機能していれば仙腸関節は安定しますが、これらが弱いと関節への不規則な荷重がかかります。また、股関節の可動域制限があると、仙腸関節が代償的に動きすぎて過負荷になることがあります。
腰椎の側弯・骨盤の傾き・脚長差も仙腸関節への荷重を変えます。「片側だけ痛い」という方では、左右の荷重バランスを全体として見直す必要があります。
日常でできること
- 骨盤ベルト(仙腸関節部位)で一時的に関節を安定させる
- 骨盤底筋・腹横筋のインナーマッスルトレーニング(ドローイン等)
- 片側に体重をかけた立ち方(休め姿勢)を避ける
- 足を組んで座らない
- 床からの立ち上がり・寝返りは両脚を揃えてゆっくり行う
よくある質問
仙腸関節の痛みとはどんな症状ですか?
お尻の上部・腰の横(骨盤のくぼみ付近)の鈍痛・重だるさが典型的です。長時間の座位・立位のあと、または寝返りのときに痛みが出やすく、片側に集中することが多いです。脚のしびれは少ないですが、お尻から太ももにかけての放散痛を伴う場合もあります。
仙腸関節の痛みはどうすれば改善しますか?
骨盤底筋・多裂筋・腹横筋の強化、マニュアルセラピー(オステオパシー等)、姿勢・動作指導などが有効とされています。骨盤ベルトで一時的に安定させることも有効なことがあります。
産後に腰が痛いのは仙腸関節が関係していますか?
産後の腰・骨盤痛には仙腸関節が関与するケースが多いです。妊娠中のリラキシンの影響で仙腸関節が不安定になりやすく、産後半年〜1年は特に注意が必要な時期です。
仙腸関節痛と椎間板ヘルニアはどう見分けますか?
ヘルニアは前屈・長座位で悪化し脚のしびれを伴うことが多く、仙腸関節痛は寝返り・立ち上がりで痛み片側のお尻・腰に集中するのが特徴です。合併することも多く、診断には整形外科での評価が必要です。
まとめ
仙腸関節の痛みは「ヘルニアでもない、狭窄症でもない」腰痛の背後によく隠れています。片側のお尻・腰の横の鈍痛・立ち上がり時の痛みが続く方は、仙腸関節の評価を受けることをおすすめします。
骨盤の安定性・周囲筋のバランス・股関節の動きまで含めて整えることが、再発しない体への近道です。
参考文献
- Vleeming A, et al. “European guidelines for the diagnosis and treatment of pelvic girdle pain.” Eur Spine J. 2008;17(Suppl 2):S194-S255. doi:10.1007/s00586-008-0602-4
- Sembrano JN, Polly DW. “How often is low back pain not coming from the back?” Spine. 2009;34(1):E27-E32. doi:10.1097/BRS.0b013e31818b8882
- Laslett M. “Evidence-based diagnosis and treatment of the painful sacroiliac joint.” J Man Manip Ther. 2008;16(3):142-152. doi:10.1179/jmt.2008.16.3.142
関連記事
体のことで気になることがあれば
「これって流れの滞りかな」と思いあたることがあれば、一度ご相談ください。京都・大宮のオステオパシー専門院OQが、症状のある場所だけでなく、体全体の巡りから読みといていきます。

コメント