こんにちは、副院長の大村颯太です。
「脚の付け根が痛い」「股関節が詰まる感じがする」「長時間歩くと股関節が重くなる」——こうした症状は、変形性股関節症のサインであることがあります。
股関節の痛みは「歳のせい」と片付けられることが多いですが、実際には骨盤・腰椎・膝との連鎖が深く関わっており、股関節だけを診ても変わらないケースが少なくありません。
股関節の構造と「詰まり感」の正体
股関節は大腿骨頭(ボール)と骨盤の臼蓋(ソケット)が組み合わさった球関節です。正常であれば全方向に大きく動きますが、何らかの理由で動きが制限されると「詰まる感じ」が生まれます。
この詰まり感の代表的な原因がFAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)です。大腿骨頭や臼蓋の形態的な問題から、股関節を深く曲げた際に骨同士が早期に接触してしまう状態です。深く座る・しゃがむ・あぐらをかくときに特に感じやすいのが特徴です。
また、臼蓋形成不全(股関節の受け皿が浅い)も股関節痛の背景になりやすく、女性に多く見られます。この場合、関節への集中荷重が軟骨の早期摩耗につながります。
変形性股関節症とは何か
変形性股関節症(股関節OA)は、関節軟骨が摩耗して骨が変形する状態です。軽度では動き始めの痛み・股関節周囲の重だるさが主症状で、進行すると歩行時の痛み・跛行(足を引きずる歩き方)・脚長差が現れることがあります。
日本では臼蓋形成不全を背景に持つ例が多く、欧米と比べて女性の罹患率が高い傾向があります。「若いころから脚の付け根が気になっていた」という方は、早めに整形外科で確認することをおすすめします。
骨盤・腰椎・膝との連鎖
股関節の可動域が低下すると、その分の動きを腰椎が代償します。腰椎への過剰な負担は腰痛につながり、「股関節が痛くて腰も痛い」という状態になります。反対に、腰椎の問題が股関節の動きを制限しているケースもあります。
また、片側の股関節を庇うと対側の膝・腰に余分な荷重がかかります。「股関節が痛くなってから反対側の膝も痛くなった」というのはこのメカニズムによるものです。
腸腰筋(股関節を前から支える深部筋)・中殿筋(横方向のバランスを担う)・梨状筋などの周囲筋のバランスも重要で、これらの機能不全が股関節への偏った荷重を生みます。
歩行パターンと股関節への影響
股関節OAの方に多い歩行パターンとして「トレンデレンブルグ徴候」があります。患側の中殿筋が弱いと、立脚期に骨盤が反対側に傾き、股関節への圧縮ストレスが増大します。
歩幅が小さくなる・歩行速度が落ちる・足先が外を向くといった変化も、股関節の可動域低下と関連しています。「最近歩くのが遅くなった」という自覚がある方は、股関節の評価が有益なことがあります。
日常でできること
- 腸腰筋のストレッチ(片膝立ちで前脚に体重を移して30秒)
- 中殿筋の強化(横向き寝で脚を上げるクラムシェルやサイドライイング)
- 深く座りすぎない(股角90度以内に抑える)
- 歩くときに骨盤が左右に揺れすぎないよう意識する
- 体重管理(股関節への荷重を全体的に減らす)
よくある質問
股関節が痛い原因は何ですか?
股関節痛の主な原因には、変形性股関節症(軟骨の摩耗)、臼蓋形成不全、FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)、鼠径部痛症候群などがあります。痛みの場所(脚の付け根・鼠径部・お尻の奥・大腿外側)によって原因が異なるため、整形外科でのレントゲン確認が診断の第一歩です。
変形性股関節症は手術しないといけませんか?
軽度〜中等度では保存療法(筋トレ・荷重管理・動作指導・インソール等)で症状をコントロールできるケースが多いです。重度で日常生活に支障がある場合に人工股関節置換術が検討されます。まず整形外科で重症度を確認した上で保存療法の可能性を探るのが一般的な流れです。
股関節の痛みに対してオステオパシーでできることは何ですか?
骨盤・腰椎・膝・足部との連鎖を確認し、股関節周囲筋のバランス調整・骨盤の可動性の回復・荷重を変える動作指導を行います。「股関節への負担の入り方」を変えることを目指します。
股関節が詰まる感じがするのはなぜですか?
FAI(大腿骨と骨盤の骨が接触して挟み込みが起きる状態)や、関節周囲の筋・軟部組織の過緊張・癒着が主な原因です。深く座る・しゃがむ・あぐらをかく動作で特に感じやすいのが特徴です。
まとめ
股関節の痛みは「歳のせい」だけではありません。FAI・臼蓋形成不全・周囲筋のアンバランス・歩行パターンの崩れが複合して関節への負担を生みます。
骨盤から足部までの連鎖を整えることで、股関節への荷重の入り方が変わります。「痛みをかばいながら何年も過ごしている」という方は、一度全体のつながりを確認することをおすすめします。
参考文献
- Murphy NJ, Eyles JP, Hunter DJ. “Hip Osteoarthritis: Etiopathogenesis and Implications for Management.” Adv Ther. 2016;33(11):1921-1946. doi:10.1007/s12325-016-0409-3
- Ganz R, et al. “Femoroacetabular impingement: a cause for osteoarthritis of the hip.” Clin Orthop Relat Res. 2003;(417):112-120. doi:10.1097/01.blo.0000096804.78689.c2
- Harris-Hayes M, Royer NK. “Relationship of acetabular dysplasia and femoroacetabular impingement to hip osteoarthritis: a focused review.” PM R. 2011;3(11):1055-1067. doi:10.1016/j.pmrj.2011.08.533

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