痛む場所と、施術する場所が同じとは限らない
首の痛みで相談に来られたのに、背中や骨盤、前腕に施術をする。初めて受ける方には、不思議に感じられることもあると思います。
私が全身を確認するのは、首の問題を見ないためではありません。むしろ、首に起きている動きを、ほかの場所との関係からも理解したいからです。
今回ご紹介するのは、海外から旅行中に来院された30代の男性です。主な相談は首の痛みでした。評価や施術について、次のようなお声をいただいています。
「日本語翻訳:日本滞在中、大村さんのオステオパシーのセッションを受けましたが、これによって自分の体に対する捉え方が完全に変わりました。大村さんの評価は非常に詳細かつ思慮深く、単に不調を感じている箇所だけに目を向けるのではなく、体全体を一つのつながったシステムとして捉えてくださいました。頸椎、肩甲骨、胸郭、仙骨、さらには(ボルダリングで酷使していた)前腕に至るまで、各部位がどのように互いに影響し合っているのかを明確に説明してくれました。施術自体は非常に穏やかで正確、かつ非常に効果的でした。セッション後、姿勢のバランスが整い、首の動きもスムーズになり、これまで経験したことのないような心身の明瞭さを感じました。単に身体的な不調が和らいだというだけでなく、神経系がようやくリラックスできたような感覚でした。特に感銘を受けたのは、大村さんのプロフェッショナリズムと誠実さです。何が改善し、何にまだ取り組む必要があるのかを分かりやすく説明してくださり、アフターケアについても非常に丁寧なアドバイスをいただきました。急かされるようなことは一切なく、何かを無理に勧められたり売り込まれたりすることもありませんでした。心から大切にケアされていると感じました。日本滞在中に大村さんと出会えたことに深く感謝しています。帰国前にもう一度施術をお願いする予定ですし、今後日本を訪れる際には必ずまた伺いたいと思います。本当に記憶に残る有意義な体験でした。本格的で質の高いオステオパシーのケアを求めている方に、ぜひ大村さんをお勧めします。大村さん、本当にありがとうございました。」
身体を一つのつながったものとして説明したことが、ご本人の身体への理解につながったようでした。今回は、その説明の背景にあった評価と、2回の施術で確認した変化について書いてみます。
同じようなお悩みがある方へ
首の痛み・肩こりの症状は、痛みが出ている場所だけでなく、姿勢・呼吸・歩き方・これまでの身体の使い方が関係していることもあります。
「自分の場合はどこを見たらよいのか知りたい」という方は、LINEからお気軽にご相談ください。
掲載する写真は院内での評価・施術のイメージであり、この症例の患者さんの写真ではありません。
首の動きから、身体全体の状態を考える

この方は、頸椎を伸展させると左回旋が強く出る傾向がありました。上を向く動きに、左を向く動きが強く伴っていたということです。左回旋そのものにも、不自然な関節運動が認められました。
その動きがどこから生じているのか。首だけを見て判断する前に、下から支える身体の状態を確認しました。
背部の筋肉は全体に強く緊張し、左肩甲骨は右より約1.5cm高い位置にありました。下部胸郭にも非対称性があり、右側が相対的に曲がったような位置でした。仙骨周囲の硬さも特徴的でした。
こうした所見は、それぞれが単独で痛みの原因を示すものではありません。私は、首の動きと全身の状態を合わせて、今回の施術方針を考える材料にしました。
胸郭や背骨を、首の土台として捉える
首を支える土台という言葉を使うと、少しイメージしやすいかもしれません。頭や首の下には胸郭や背骨があり、さらに骨盤へと続いています。
この方では、首の動きだけを修正しようとするより、まず背部の緊張や肩甲骨、胸郭、仙骨の状態に取り組むほうがよいと考えました。
ただ、「土台が崩れているから首が痛い」と一言で結論づけるつもりはありません。身体にはもともと左右差がありますし、痛みの背景も一人ひとり違います。
評価で見つけた状態に介入したあと、首の動きやご本人の感覚がどう変わるか。そこまで確認して、見立てを考え直せるようにしています。
ボルダリングをされる方の、前腕の緊張
今回の生活背景として、ボルダリングをされていることも確認しました。実際に前腕を評価すると、強い緊張があり、左側でより目立っていました。
初回は、背部の筋緊張をゆるめ、肩甲骨や脊柱の位置関係を調整し、仙骨周囲へのリリースを行いました。それに加えて、前腕の緊張にも取り組んでいます。
首、肩甲骨、胸郭、腕を、別々の場所として扱うだけではなく、この方の身体の中でどう関係しているかを考えた施術でした。
もっとも、ボルダリングによる前腕の緊張だけで首の痛みを説明できたわけではありません。活動歴と評価所見の両方を見て、必要と考えた部位に介入しました。
初回の変化だけで、評価を終えない
初回の再評価では、肩甲骨や下部肋骨の状態に変化が見られ、伸展時の左回旋は認められなくなりました。ご本人からも、首を直接施術していないのに楽になったという反応がありました。
一方で、左を向く際の不自然な関節運動は、少し残っていました。
楽になったという感想と、評価上の課題が残っていることは、両立します。ここを曖昧にせず、変わったことと、まだ確認していきたいことを説明しました。
旅行中の方ですから、通院の提案にもご予定やご希望があります。残っている課題をお伝えしたうえで再来院をご提案し、ご本人も希望されたため、2回目の施術を行いました。
2回目の再評価で確認できたこと
2回目は、胸椎や肋骨を含む胸郭周囲への追加の調整を行いました。施術後には、評価で認めていた頸椎の不自然な動きが確認されなくなりました。
この経過は、首の動きが全身への介入後に変わった一例として捉えています。どの部位への施術がどの程度影響したかを、このケースだけで切り分けることはできません。
また、その場の再評価で動きが変わったことと、長期的に症状が再発しないことは別です。今回の結果を、誰にでも同じ変化が起きるという意味ではお伝えしていません。
口コミでは、姿勢のバランスや心身のすっきりした感覚にも触れていただきました。こうしたご本人の感覚を尊重しながら、施術者が確認した所見とは分けて説明するようにしています。

首を見るために、首以外にも目を向ける
私が今回改めて感じたのは、首の不調だからこそ、その首がどんな身体の上で動いているかを確かめたい、ということでした。
全身を見ることと、首を丁寧に評価することは、反対の考え方ではありません。首の動きを確認し、身体全体に目を向け、施術後にまた首の動きへ戻る。その往復が、今回の臨床判断の中心でした。
首や肩をほぐすと一時的に楽になるものの、同じ不調を繰り返す。そうした方では、局所の状態に加えて、胸郭や背骨、骨盤、普段の身体の使い方を確認することも、一つの選択肢です。
京都のOQでは、ご本人が感じていることと評価で見つけたことを共有しながら、状態に合わせたオステオパシーの施術を考えます。必要に応じて、局所への施術や医療機関での確認も含めて判断します。急な強い痛みや、けがの後の痛み、しびれや筋力低下を伴う場合は、まず医療機関にご相談ください。
よくある質問
肩や首の症状でも、全身を見るのはなぜですか?
肩や首は、胸郭、肩甲骨、背骨、呼吸、腕の使い方と関係しています。痛い場所だけをゆるめても戻りやすい場合は、全体のつながりを確認することがあります。
五十肩のように動かしにくい状態でも施術できますか?
状態を見ながら進めます。炎症が強い時期は無理に動かすよりも、痛みを強めない範囲で周囲の緊張や動きの関係を確認することが大切です。
強い刺激が苦手でも大丈夫ですか?
強く押すことを目的にはしていません。身体の反応を見ながら、必要な範囲で進めます。不安がある場合は、施術中にも遠慮なくお伝えください。

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