肩こりというと、どうしても肩まわりの筋肉に目が向きやすいです。けれど、実際の現場では「肩を揉んでもその時だけ」という方ほど、頭の位置や胸郭、足元の支え方にヒントがあることがあります。
今回の一例は、20代のデスクワーカーの男性です。健康意識が高く、仕事にも前向きに取り組みたい方でしたが、肩こりと姿勢のゆがみ、疲労感によって集中しにくい状態が続いていました。
理学療法士・健康科学修士・発達ケア・アドバイザーの大村颯太が、今回の一例をもとにお伝えします。※変化のあらわれ方には個人差があります。
今回のケースから見えてきたこと
この方は、肩こりだけでなく、姿勢のゆがみやデスクワーク中の疲労感も気にされていました。若く、仕事への意欲も高い方でしたが、身体の不調があると集中力にも影響します。
印象的だったのは、予防への意識が高かったことです。痛くなってから何とかするというより、健康度を高めて、仕事やトレーニングをより良い状態で続けたい。そういう目的がはっきりしていました。
局所だけでは説明しにくい背景
肩こりがあると、肩や首の筋肉を揉みたくなります。もちろん、それで一時的に楽になることはあります。ただ、頭が前に出たままの場合、首の後ろ側の筋肉は、ずっと頭を支え続けることになります。
この「頭を支える仕事」が残ったままだと、肩まわりをほぐしても、また同じ場所に負担が集まりやすいです。今回も、肩そのものより、頭と胸骨の位置関係、後頭骨と頸椎上部の状態、さらに膝や足首の支え方を見直す必要があると考えました。
評価で着目したポイント
施術前は、頭が前方へ出やすい姿勢が見られました。頭が前にあると、首の後ろ側の筋肉は緊張しやすくなります。肩こりを感じる場所が肩でも、背景には頭の位置が関係していることがあります。
もう一つ見ていたのは、左右差です。姿勢全体に偏りがあり、下肢では両膝が外側へ逃げやすい傾向、足首の位置関係の乱れもありました。上半身の不調でも、土台である足元の情報は無視できません。
今回行ったアプローチ
中心にしたのは、胸骨と頭の位置関係の調整です。胸の前側がつぶれ、頭だけが前に残るような状態では、首の後ろ側に負担が集まりやすくなります。
特に、後頭骨と第1頸椎まわりを確認し、首の上部が固まりすぎないようにアプローチしました。そこに加えて、膝や足首の位置関係も整え、下から姿勢が支えやすい状態を目指しました。
肩を直接どうにかする、というよりも、肩に負担が集まり続ける理由を減らしていく。今回の施術は、そういう組み立てでした。
ビフォーアフター(動画と写真で見る変化)
▲ 施術前後の変化(動画)
施術後は、姿勢全体の左右差が少なくなり、頭の位置も後方へ落ち着いてきました。ご本人も肩こりの軽減を感じられ、その後はトレーニングも楽しみながら継続されています。※変化には個人差があり、同じ結果をお約束するものではありません。
日常で意識したいセルフケア
まず大切なのは、「肩がつらいから肩を強く揉む」だけにしないことです。デスクワーク中に顔が画面へ近づいていないか、胸の前側がつぶれていないか、足裏が床から浮いていないか。このあたりを時々確認してみてください。
あごを無理に引く必要はありません。後頭部が少し上に伸び、胸骨との距離が保たれるような位置を探すと、首の後ろ側が働きすぎにくくなることがあります。
この変化をどう考えるか
今回の変化は、肩だけをほぐした結果というより、頭・胸郭・骨盤・下肢の位置関係が変わったことで、首や肩が頑張りすぎなくてよい状態に近づいた、と考えています。
肩こりは、つらい場所だけで完結していないことがあります。特にデスクワークの方は、同じ姿勢が長く続くため、身体がその形を覚えてしまいやすいです。だからこそ、月1回のメンテナンスやセルフケアで、良い状態に戻る感覚を積み重ねていくことが大切になります。
OQでご相談いただきたい方へ
肩こりが続いている方、揉みほぐしでは一時的にしか変わらない方、仕事の集中力や日常の疲れやすさまで気になっている方は、姿勢の位置関係を見直すことが役に立つかもしれません。
OQでは、痛いところだけを見るのではなく、身体全体のつながりと生活背景を含めて確認していきます。健康度を高めて、仕事や運動をより楽しめる状態を一緒に目指していきます。
参考文献
- Mahmoud, N. F., Hassan, K. A., Abdelmajeed, S. F., Moustafa, I. M., & Silva, A. G. (2019). The relationship between forward head posture and neck pain: A systematic review and meta-analysis. Current Reviews in Musculoskeletal Medicine.
- Nejati, P., Lotfian, S., Moezy, A., & Nejati, M. (2014). The relationship of forward head posture and rounded shoulders with neck pain in Iranian office workers. Medical Journal of the Islamic Republic of Iran, 28, 26.
- Kang, N. Y., Im, S. C., & Kim, K. (2021). Effects of a combination of scapular stabilization and thoracic extension exercises for office workers with forward head posture on the craniovertebral angle, respiration, pain, and disability: A randomized-controlled trial. Turkish Journal of Physical Medicine and Rehabilitation, 67(3), 291–299.

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