膝の内側が痛い——変形性膝関節症と歩き方・骨盤のつながり

こんにちは、副院長の大村颯太です。

「膝の内側が痛い」「階段を降りるときに膝が痛む」「長時間歩くと内側が重くなってくる」——こうした症状で来院される方はとても多いです。

膝の内側の痛みは、変形性膝関節症のサインであることがありますが、そこに至る背景には「膝だけ」では説明できない要因が絡んでいます。今回は、内側型膝痛の仕組みと、歩き方・骨盤との関係を整理します。

目次

なぜ「内側」が痛くなるのか

膝関節は内側と外側の2つのコンパートメント(区画)に分かれています。日常の歩行では荷重の約60〜70%が内側にかかるとされており、もともと内側は負担が集中しやすい構造です。

この内側への荷重がさらに増えると、内側の軟骨が摩耗しやすくなります。これが「内側型変形性膝関節症」です。

内側への荷重が増える主な要因はこのようなものです。

  • O脚(内反変形)——脚のアライメントが内側に荷重を集中させる
  • 外股歩き(toe-out)——足が外を向く歩き方で内側のモーメントが増大する
  • 股関節の外旋制限——内旋筋の弱さが膝に代償的な負担をかける
  • 扁平足・過回内——足部から上がってくる内側荷重
  • 体重増加——内側への圧縮ストレスが全体的に増える

「O脚だから膝が痛い」は半分正解

O脚(膝が外側に張り出しているアライメント)は確かに内側荷重を増やします。ただし、「O脚=膝が痛い」ではありません。

重要なのは「どう歩いているか」です。同じO脚でも、重心の使い方・足の踏み出し方・股関節の動きによって膝への負担は大きく変わります。歩行中の「膝アダクションモーメント(内側への圧縮力)」が実際の軟骨摩耗と相関するという研究もあります。つまり、アライメントだけでなく動作パターンが鍵になります。

骨盤・股関節が膝に影響する理由

膝の内側痛を抱える方に多いのが、「股関節の外旋筋(お尻の筋肉)の弱さ」や「骨盤の傾きのアンバランス」です。

股関節を正しく使えていないと、着地時に膝が内側に入りやすくなります(ニーイン)。これは膝の内側靭帯や軟骨に繰り返しストレスをかけます。お尻の筋肉(中殿筋・大殿筋)が機能していれば、この内側への崩れを防ぐことができます。

骨盤の左右差も関係します。片側に傾いた骨盤は、同側の脚への荷重を変え、膝のアライメントを崩す方向に作用します。「膝だけほぐしても変わらない」という方は、骨盤・股関節の動きを見直すことで変化が生まれることがあります。

鵞足炎という見落とされやすい原因

膝の内側の痛みが「変形性膝関節症ではなく鵞足炎だった」というケースも少なくありません。

鵞足(がそく)は、縫工筋・薄筋・半腱様筋の3つが膝の内側下部に共同で付着する部位です。ここに炎症が起きると、歩き始め・階段・膝の曲げ伸ばしで痛みが出ます。変形性膝関節症と合併することも多いです。

鵞足炎の背景にも股関節・骨盤の問題があることが多く、局所だけへのアプローチでは繰り返す傾向があります。

日常でできること

  • 歩くときに足先を正面〜やや内向きに意識する(外股を減らす)
  • 股関節のストレッチ(特に外旋筋・腸腰筋)を日課にする
  • 椅子からの立ち上がりをゆっくり丁寧に行う(膝が内側に入らないよう)
  • クッション性のある靴や内側アーチをサポートするインソールを検討する
  • 体重管理(1kgの体重減少で膝への荷重は約4kg減るとされる)

よくある質問

膝の内側が痛いのは変形性膝関節症ですか?

膝の内側の痛みの原因は複数あります。変形性膝関節症(軟骨の摩耗)のほか、内側側副靭帯の炎症、鵞足炎(縫工筋・薄筋・半腱様筋の付着部炎症)なども考えられます。レントゲンで軟骨の状態を確認することが診断の第一歩です。

O脚があると膝が悪くなりますか?

O脚(内反変形)があると、歩行時の荷重が膝の内側に集中しやすくなります。内側の軟骨への負担が増えるため、変形性膝関節症が進行しやすい傾向があります。ただし、O脚だけでなく歩き方・重心の使い方・筋力バランスも大きく影響します。

膝の痛みに対してオステオパシーでできることは何ですか?

オステオパシーでは、膝単体ではなく骨盤・股関節・足部を含めた下肢全体の連鎖を確認します。荷重分散を変える動作指導、股関節周囲筋のバランス調整、足部アーチの評価など、「膝への負担の入り方」を変えることを目指します。

変形性膝関節症は手術しないと治りませんか?

軽度〜中等度であれば、保存療法(運動療法・荷重管理・インソール等)で症状が安定するケースは多いです。手術(人工膝関節置換等)は保存療法で改善しない重度の場合に検討されます。まず整形外科で重症度を確認した上で、リハビリや運動療法を検討するのが一般的な流れです。

まとめ

膝の内側の痛みは、膝だけの問題ではありません。O脚・外股歩き・股関節の弱さ・骨盤の傾き——これらが複合して内側への荷重集中を生みます。

「膝を庇うように歩いていたら反対側も痛くなってきた」という方は特に、歩行全体の見直しが必要なサインです。当院では足部から骨盤まで動きの連鎖を確認しながら、膝への負担の入り方を変えるアプローチをしています。

参考文献

  1. Hunter DJ, Bierma-Zeinstra S. “Osteoarthritis.” Lancet. 2019;393(10182):1745-1759. doi:10.1016/S0140-6736(19)30417-9
  2. Miyazaki T, et al. “Dynamic load at baseline can predict radiographic disease progression in medial compartment knee osteoarthritis.” Ann Rheum Dis. 2002;61(7):617-622. doi:10.1136/ard.61.7.617
  3. Chang A, et al. “The relationship between toe-out angle during gait and progression of medial tibiofemoral osteoarthritis.” Ann Rheum Dis. 2007;66(10):1271-1275. doi:10.1136/ard.2006.062927

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この記事を書いた人

大村颯太
・理学療法士
・健康科学修士
・発達ケア・アドバイザー上級

Sota Omura
・Physiotherapist
・Master of Health Science
・JEFPA Certified Foot Care Advisor
・Developmental Care Advisor

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