姿勢の変化を、見た目だけで終わらせないために
背中が丸くなっている。右肩が下がっている。脳卒中後の身体を見るとき、そうした姿勢の特徴に目が向くことがあります。
ただ、私が知りたいのは、その姿勢の中でご本人がどんなふうに息をして、身体を支え、足を運んでいるのかということです。
今回は、右片麻痺が残る50代男性のケースです。身近で経過を見守る方から、姿勢や深呼吸、身体の使い方の変化についてお声をいただきました。
麻痺が残っていても、生活の中の動きには変化が見られています。その変化を「麻痺が治った」という一言に置き換えず、何が変わり、何が課題として残っているのかを分けて考えたいと思います。
同じようなお悩みがある方へ
脳卒中後遺症の症状は、痛みが出ている場所だけでなく、姿勢・呼吸・歩き方・これまでの身体の使い方が関係していることもあります。
「自分の場合はどこを見たらよいのか知りたい」という方は、LINEからお気軽にご相談ください。
足を運ぶ前に、体幹でどう支えているかを確認する

初回来院時、この方には右の手足に中等度以上の麻痺がありました。右肩が下がり、背中は丸まり、肩甲骨の高さも左右で違っていました。
杖を使ってゆっくり歩かれ、右足を外側に回して運ぶ分回し歩行が見られました。当時は屋外での歩行もまだできていない状態でした。
その中で、特に気になったのが背骨と胸郭の硬さです。呼吸も浅く、左右の動き方に差がありました。
歩くことを足だけの問題として捉えると、こうした体幹の状態を見落としてしまうかもしれません。今回、私は足の運びだけでなく、座ったときから立って歩くときまで、身体の支え方を続けて見ていきました。
左右対称にすることより、その方が使いやすい身体を探す
見た目の左右差を減らすことと、ご本人が動きやすくなることは、必ずしも同じではありません。
この方の場合も、右肩の高さだけを合わせようとするのではなく、胸まわりがどの程度動くか、背骨の動きがどこで制限されるか、左右で身体の動かし方がどう違うかを確認しました。
麻痺そのものへの評価と、身体の硬さや動き方への評価。その両方を持っておくことで、今の身体に対して何を支援できるかを考えやすくなると感じています。
オステオパシーで全身を見るというのも、今回でいえば、肩・背骨・胸郭・歩行を切り離さずに捉えるということです。
手による施術と、身体を使う練習を並行して行う
背骨や胸郭の柔軟性に働きかけるため、全身の状態を確認しながら施術を行いました。さらに、左右へのリズミカルな感覚刺激と、体幹のエクササイズも組み合わせています。
一つの手技だけで説明できる経過ではありません。身体に触れて確認すること、動いてもらうこと、その反応を見ることを重ねながら進めました。
通院は当初の週2回から週1回へ、現在は月1回程度となっています。この頻度は今回の個別の経過であり、ほかの方にそのまま当てはめるものではありません。
呼吸や姿勢の変化が、日常の移動の話につながってきた
経過の中で、呼吸がしやすくなった、ずいぶん歩きやすくなったというお話をいただきました。周囲の方からも、姿勢が変わったと言われるそうです。
現在は屋外を一人で歩き、バスで来院されています。階段の上り下りも以前よりスムーズになり、杖なしで歩く練習も増えているとのことです。ただし、杖なし歩行が日常のすべての場面で自立したということではありません。
こうした話を聞くと、姿勢を見る意味は、背中が伸びたかどうかだけではないと改めて感じます。その人の生活で、何がしやすくなったのか。そこを確かめるところまでが評価なのだと思います。
もちろん、麻痺は今も残っています。また、施術、運動、日常の活動を重ねた経過から、施術だけの効果を切り分けることはできません。今回の変化を、すべての方に約束するものでもありません。
長く関わるからこそ、気づける変化がある
施術前後の反応を見ることは必要ですが、脳卒中後の経過は、それだけでは語れないと感じています。
月単位、年単位で見ていく中で、外を歩く、バスに乗る、階段を使うといった生活の変化が見えてくる。今回、私の印象に残っているのもその部分です。
麻痺の程度だけを物差しにせず、呼吸や身体の使いやすさ、移動できる範囲にも目を向ける。OQでは、そうした視点を持ちながら、ご本人が困っていることを一緒に確認していきたいと考えています。
脳卒中後の姿勢や緊張、歩き方について相談される際は、現在受けている診療やリハビリのこともお聞かせください。必要な医療を続けながら、当院で対応できる範囲を見極めて進めます。
よくある質問
脳卒中後の歩きにくさは、麻痺のある足だけを見ますか?
麻痺のある足だけでなく、体幹、骨盤、反対側の足、姿勢、呼吸、全身の緊張なども確認します。歩行は脚だけではなく、身体全体で重心を移す動作だからです。
大きな負荷をかける運動が難しくても相談できますか?
はい。年齢や痛み、その日の体調を考慮しながら、立つ、体重を移す、短い距離を歩くといった低負荷の動作から進めることがあります。
脳卒中後はどのくらいの頻度で通えばよいですか?
状態や生活環境によって変わります。ご本人の反応やご家族の負担も確認しながら、無理なく続けられる頻度を一緒に考えていきます。

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