「恐怖麻痺反射」という説明を、どこまで信じてよいのか


「恐怖麻痺反射」という説明を、どこまで信じてよいのか|院内の様子

分かりやすい名前がつくと、安心することがあります

人と目を合わせるのが苦手だったり、予想外の出来事で身体が固まったりする。理由が分からない状態が続くと、自分でも不安になります。

そこで「恐怖麻痺反射が残っているからです」と説明されると、急に全部がつながったように感じることがあります。性格や努力不足ではなく、身体の反応だったのか。そう考えることで救われる方もいると思います。

一方で、「自分は生まれつき恐怖に弱い」「妊娠中の母親のストレスが原因だったのでは」と、新しい不安が生まれる可能性もあります。

国内のウェブサイトでは、恐怖麻痺反射を胎児期に現れる原始反射とし、その残存と感覚過敏、不安、完璧主義、視線の合わせにくさなどを関連づけた説明が見られます。[1][3]

ただ、医学的な原始反射としてどこまで確認されているのかを調べると、モロー反射や把握反射とは証拠の状況がかなり違いました。

体験談は、その方が感じた変化として尊重したいと思います。ただ、体験があったことと、その説明に使われた理論が正しいことは同じではありません。

同じようなお悩みがある方へ

子どもの症状は、痛みが出ている場所だけでなく、姿勢・呼吸・歩き方・これまでの身体の使い方が関係していることもあります。

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freeze反応と恐怖麻痺反射は、同じものなのでしょうか

脅威を感じたときに身体が固まるfreeze反応や、動かなくなるtonic immobility、急な刺激に対するstartle反応は存在します。

“fear paralysis reflex”という名称を用いた研究もありますが、主に動物の不動反応に伴う心拍・心電図変化を検討したものです。[4]

ここから、「人にも防御性の不動反応がある」と考えることは不自然ではありません。ただし、それを受胎後5〜8週に出現する独立した原始反射と定義し、出生後の不安や視線の問題まで説明するには、別の証拠が必要です。

反射というなら、どの刺激で、どの反応が、どの時期に、どの程度の確率で起こるのか。ほかの運動や反応と区別できるのか。誰が評価しても同じ結果になるのか。そうした確認が求められます。

胎児の動きに、後から意味を付けすぎない

胎芽は妊娠7〜8週ごろから動き始めます。[5]

ただ、初期の屈曲運動や刺激から離れるような動きを、「恐怖で固まった」と表現することには慎重さが必要です。自発運動、逃避反応、感覚運動系の発達など、ほかの説明も考えられるからです。

胎児本人の心理状態を確認することはできません。「動いた」「丸まった」という観察と、「怖かった」という解釈の間には、どうしても推論が入ります。

胎児のstartle反応は、振動音響刺激と心拍変化を用いて研究されています。妊娠26週では明確でなく、31週ごろから安定した反応が確認されたという報告があります。[6]

受胎後5〜8週という非常に早い段階の反応を、後期胎児のstartleや新生児のモロー反射と同じ発達系列に置けるかは、まだ分かっていません。

モロー反射には臨床で共有された基準があります

モロー反射は、新生児の神経学的評価で用いられます。刺激に対する両上肢の外転・伸展、その後の内転・屈曲という反応があり、左右差や欠如、残存が臨床上の手掛かりになります。

一般には胎生25週ごろから観察され、出生後3か月ごろから減弱し、6か月までに消失します。[7]

恐怖麻痺反射には、こうした標準的な誘発法、判定基準、正常経過がまだ十分にありません。

反射統合を扱う団体では、恐怖麻痺反射が出生前にモロー反射へ移行すると説明されています。[8] しかし、恐怖麻痺反射からモロー反射へ変化する過程を、胎児期から縦断的に示した論文は今回確認できませんでした。

ここは、「確認された事実」ではなく「発達を説明する仮説」として理解する方が妥当そうです。

胎児研究は難しい。それでも、仮説と事実は分けたい

胎児へ強いストレスを意図的に加え、反応を見る研究は倫理的にできません。特に妊娠初期の胎児では、行動や自律神経反応を細かく測定することにも限界があります。

このため、恐怖麻痺反射に関する研究が少ない理由の一つとして、研究の難しさは確かにあると思います。

ただ、胎児研究では、母親が日常で経験しているストレス、ホルモン、胎児心拍、胎動、超音波、安全な刺激、リラクゼーション、出生後の発達などを組み合わせた研究が行われています。

調べにくいことと、調べる方法がまったくないことは同じではありません。また、証拠が少ないことは「存在しない」という証明にはなりませんが、「存在する」と断定する根拠にもなりません。

この間にある不確かさを、そのまま伝える必要があります。

母親の責任にしてしまう説明には慎重でありたい

妊娠中のストレスと胎児の心拍・運動、出生後の発達との関連は研究されています。関連を認めた報告はありますが、遺伝、栄養、社会的支援、出生状況、出生後の環境など、多くの要因が影響します。[9]

系統的レビューでも、妊娠中の心理的苦痛と乳幼児期の発達との関連は、小さく、状況に依存する相関であり、直接的な因果関係を示すものではないとされています。[10]

それにもかかわらず、「母親が妊娠初期にストレスを感じたため、子どもの恐怖麻痺反射が残った」と説明すると、母親は過去を振り返って自分を責めてしまうかもしれません。

妊娠中に不安になることも、体調を崩すこともあります。そこから子どもの現在の特徴までを一直線につなげることはできません。

本人に対しても同様です。「私は生まれ持った反射のせいで、人と関われない」と固定的に捉えると、変化する可能性まで狭めてしまいます。

目線が合わないことの意味を、その人ごとに考える

目を合わせにくい理由は一つではありません。

人の顔から入ってくる情報量が多い。目を合わせながら言葉を処理するのが難しい。緊張している。光が眩しい。相手との距離感が分からない。疲れている。過去の経験から警戒している。

逆に、視線を外した方が相手の話を理解しやすい場合もあります。

そのため、「目が合わない」という所見だけで恐怖麻痺反射と判断するのは難しいと思います。

ただ、本人が社会生活の中で困っているなら、その困りごとは現実です。身体が固まる場面、刺激、呼吸、筋緊張、考えていること、周囲の関わり方などを一緒に見ていく必要があります。

変化があったことと、説明が正しいことを分ける

原始反射統合の運動や施術を受けて、楽になったと感じる方はいると思います。その経験を否定するつもりはありません。

運動や呼吸、揺れ、タッチには、身体への注意を促し、緊張を和らげる可能性があります。安心できる人と反復して取り組むこと自体にも意味があるでしょう。

ただし、その変化を「恐怖麻痺反射が統合された」と証明するには、信頼できる評価法と対照比較が必要です。

恐怖麻痺反射を含む介入を扱った近年の報告はありますが、確認できたものは7歳児1名の症例報告です。対照群がなく、観察者による採点で、長期追跡もありませんでした。[11]

この報告だけで、恐怖麻痺反射の存在や介入効果を一般化することはできません。


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分からないからこそ、一つの説明に閉じない

現時点で私が考えているのは、恐怖によるfreeze反応は存在するものの、「恐怖麻痺反射」という独立した胎児期反射と、その遺残による症状を結びつける理論は、まだ十分に検証されていないということです。

でも、これは困っている人に「気のせいです」と言う話ではありません。

身体、感覚、心理、発達、視覚、睡眠、生活環境。いろいろな方向から見て、その人が実際に困っている場面を少しずつ変えていく。オステオパシーで関わる場合も、反射名だけで判断せず、呼吸や姿勢、筋緊張、刺激への反応、全身の動きなどを確認したいと思っています。

恐怖麻痺反射の出現時期、モロー反射との関係、評価方法の妥当性などを検証した研究をご存じの方がおられましたら、ぜひ教えてください。否定するためではなく、私自身ももう少し正確に知りたいと思っています。

参考文献

Buss, C., Davis, E. P., Class, Q. A., Gierczak, M., Pattillo, C., Glynn, L. M., & Sandman, C. A. (2009). Maturation of the human fetal startle response: Evidence for sex-specific maturation of the human fetus. Early Human Development, 85(10), 633–638.

Futagi, Y., Toribe, Y., & Suzuki, Y. (2012). The grasp reflex and Moro reflex in infants: Hierarchy of primitive reflex responses. International Journal of Pediatrics, 2012, 191562.

Kaada, B. (1989). Electrocardiac responses associated with the fear paralysis reflex in infant rats and rabbits. Physiology & Behavior, 46(4), 595–601.


よくある質問

痛みがある場所だけを施術するのですか?

痛みがある場所も確認しますが、そこだけで判断しないこともあります。姿勢、呼吸、関節の動き、筋膜の緊張、生活動作などを合わせて見ていきます。

どのくらいの頻度で通う必要がありますか?

症状の経過や身体の状態によって変わります。初回の評価や反応を見ながら、無理のない頻度を一緒に考えていきます。

強い施術が苦手でも受けられますか?

はい。強く押すことを目的にせず、身体の反応を確認しながら進めます。不安なことがあれば、施術中でも遠慮なくお伝えください。

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この記事を書いた人

大村颯太
・理学療法士
・健康科学修士
・発達ケア・アドバイザー上級

Sota Omura
・Physiotherapist
・Master of Health Science
・JEFPA Certified Foot Care Advisor
・Developmental Care Advisor

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