ぎっくり腰が繰り返すのは、腰が弱いからではありません。体が同じやり方で腰をかばい続けているサインです。
また来るかもしれない、と思いながら過ごしていませんか?
一度やってしまうと、次が怖くなります。重い荷物の前で一瞬ためらう。朝、靴下をはくときに体をこわばらせる。旅行の予定を立てるとき、まず腰のことを考える。
痛みそのものより、「また来るかもしれない」という感覚のほうが、暮らしを狭くしていることがあります。気の持ちようではありません。体が本当に警戒しているからです。
体は、腰をどう守ろうとしているのでしょうか?
痛みが出たとき、体はまず腰のまわりを固めます。動かさないようにして、それ以上こわさないためです。短い期間なら、これはとても賢いやり方です。
かばう姿勢は、どのくらいで体になじんでしまうのでしょうか?
困るのは、この「かばう形」が長引いたときです。当院の書籍ライブラリにある現代オステオパシーの教科書『The Five Osteopathic Models』(Track B+)では、痛みの信号によって生じた〈異常な防御的な筋肉の姿勢〉が長く続くと、結合組織そのものが作り変わり、組織の手ざわりが変わっていく、と整理されています。同書は、その姿勢が保たれたままだと慢性化しうるとも書いています。
つまり体は、「守る形」を応急処置として始めます。ところがその形が続くと、材料のほうがその形に合わせて作り直されてしまう。ギプスを外したあとに腕が細くなっているのと、少し似た話です。
痛みと緊張は、どんなふうに輪になるのでしょうか?
同じ本には、〈痛み—けいれん—痛み〉の輪という表現が出てきます。痛いから縮む、縮むから動かせない、動かさないからまた痛い。この輪は、最初のきっかけがとっくに過ぎたあとも回り続けることがあります。
だから「きっかけになった動作」を思い出そうとしても、答えが出ないことがあるのです。
「やりくり」が追いつかなくなる、とはどういうことでしょうか?
体は、どこかが動きにくくなると、別の場所が余分に働いて埋め合わせます。これを代償と呼びます。
『The Five Osteopathic Models』は、代償が左右交互にうまく入れ替わっている状態を「適応できている」、交互でなくなった状態を「適応する力が落ちている」と読みます。後者は、繰り返しの小さな負担が積み重なったあとに見られるとされています。同書は健康を「正常であること」ではなく「まわりの変化に合わせて反応を変えられること」と言い換えてもいます。
この見方を借りるなら、ぎっくり腰が繰り返すのは、腰がこわれているというより、やりくりの幅が狭くなっているサインとして読めます。
なお「体はひとつのまとまりとして働く」「体には自分を調節する仕組みがある」「かたちとはたらきは互いに関係している」という、よく知られた三つの言い方があります。創始者本人が書き残したリストではありません。1953年にカークスビルの大学で8人の委員会がまとめたもの(1953年のカークスビル・コンセンサス)で、委員会自身が「完全なものではなく、教義でも信条でもない」と断っています。
OQでは、腰のどこを見ているのでしょうか?
腰が痛いときに腰だけを見ていると、さきほどの輪の中にとどまりやすくなります。『The Five Osteopathic Models』も、症状のある場所だけに目を向けないことが大切だ、と書いています。
2階を担当する大村は、脳卒中後のリハビリと下肢の症状を長く担当してきた理学療法士です。腰のご相談でも、次の順番で見ていきます。
- 腰そのもの:どの動きで痛むのか、どこで動きが止まるのか
- 骨盤と股関節:腰の代わりに働きすぎていないか
- 足と歩き方:一歩ごとに腰へ届く力の向きと量
固まっている場所をゆるめるだけでなく、余分に働きすぎている場所の負担も減らしていきます。腰と足のつながりについては腰痛と足の関係、お尻の奥の鈍い痛みについては仙腸関節の痛み、股関節の詰まり感については股関節の痛み・詰まり感もあわせてご覧ください。
今日から自分でできることは、何かありますか?
特別な体操より先に、次の三つを試してみてください。
- 痛みの出ない範囲で、こまめに動く。「動く」か「休む」かの二択ではなく、そのときの痛みの強さを目安にして幅を決めます。
- 同じ姿勢を30分以上続けない。座り直す、立ち上がる、少し歩く。それだけで十分です。
- 持ち上げるときに息を止めない。息を止めると、腰のまわりが余計に固まりやすくなります。
急な痛みが出た直後の過ごし方はぎっくり腰になったら、まず何をすればいい?に、繰り返す腰痛の背景については腰痛が繰り返す本当の理由にまとめています。
どんなときに、医療機関を受診したほうがよいのでしょうか?
次のような場合は、まず医療機関を受診してください。
- 足のしびれや力の入りにくさが、だんだん広がっている
- 排尿や排便がいつもと違う
- 横になっていても痛みが強くなる、夜に痛みで目が覚める
- 発熱をともなう
- 転倒や事故のあとに痛みが出た
- がんと診断されたことがある、または骨粗しょう症と言われている
OQは医療機関ではありません。診断と薬の処方は医師が行います。この記事は一般的な情報をお伝えするもので、個別の診断に代わるものではありません。
よくいただくご質問
ぎっくり腰は、長くつきあうものなのでしょうか?
「ぎっくり腰は治りますか」とよく聞かれます。急な痛みそのものは、多くの場合、数日から数週間で落ち着いていきます。ただ、落ち着いたあとにかばう形が残っていると、また同じ場面で出てくることがあります。痛みが引いたところで終わりにせず、動きの幅が戻っているかを確かめておくと安心です。
痛みが出たら、安静にしていたほうがよいのでしょうか?
痛みが強い最初の1〜2日は無理をしないほうが楽です。ただ、そのあとも横になり続けると、動きの幅が戻りにくくなります。痛みの出ない範囲で少しずつ動く、が目安です。
腰が痛いのに、なぜ足や股関節を見るのでしょうか?
歩くたびに、地面からの力は足首・膝・股関節を通って腰に届きます。その途中に動きの足りない場所があると、腰が余分に働くことになります。腰だけをゆるめても、同じ力が同じ場所に届き続けます。
何回くらい通えばよいのでしょうか?
体の状態と、いつから続いているかで変わります。目安は大村の施術を受ける際の来院頻度の目安にまとめています。初回に、いまの状態と見通しをお伝えします。
病院で「異常なし」と言われました。それでも相談してよいのでしょうか?
はい。画像に写らない動きのかたよりが残っていることがあります。腰痛で「異常なし」と言われた方へもあわせてご覧ください。急な腰の痛み全般についてはぎっくり腰(急性腰痛症)のページが入口になります。
この記事で参照した本
- Christian Lunghi, Paolo Tozzi, Giampiero Fusco ほか『The Five Osteopathic Models — Rationale, Application, Integration』(当院書籍ライブラリ/Track B+)
- Jane Eliza Stark, “An historical perspective on principles of osteopathy”, International Journal of Osteopathic Medicine, 2013(同/Track B)
この記事は、京都オステオパシーセンターOQ 院長 坂田雄亮(BSc(Ost))の臨床経験と、当院の書籍ライブラリの読解をもとに構成しています。文章化の一部にAIを使用し、公開前に坂田が内容を確認しています。
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