上腕骨近位端骨折は、転倒時に肩から地面に落ちたときなどに生じる骨折で、高齢女性に多いことが知られています。骨粗しょう症が背景にあることが多く、反対側の骨折や別部位の骨折リスクも高まります。骨片の数や転位の程度によって、Neer分類(1-part〜4-part)で重症度を評価し、治療方針が決まります。
- 保存療法(三角巾・スリングによる固定) — 多くの症例
- 観血的整復固定術(ORIF) — プレート・髄内釘
- 人工骨頭置換術 — 関節破壊が著しい4-part骨折など
- リバース型人工肩関節 — 高齢者・腱板断裂併存例
- 術後早期からの可動域訓練(振り子運動など)
- 段階的な挙上・外旋・内旋訓練
- 髪を結ぶ・服を着る・洗髪などの日常動作の再獲得
肩関節は挙上・外旋・内旋・水平内転・水平外転と多方向に動く、人体で最も可動域の大きい関節です。退院後・保険リハ卒業後も、挙上制限・外旋制限・夜間痛・後ろに手を回す動作の困難が長く残ることが多く、髪・服・洗濯物・棚の物を取るといった日常動作に直結します。長期的な視点でのリハビリが必要です。
術後の目標は「腕が動くこと」だけではなく、「安心して肩を使えること」です。肩を固定された後は、「動かして大丈夫か」「力を入れて大丈夫か」という不安が動作を制限します。これを解きほぐすことが、本来の動きへの最大のリスク要因の一つです。
上腕骨近位端骨折術後は、肩関節そのものの可動域回復に加えて、肩甲骨・鎖骨・胸郭・首・反対側の肩の動きが連動して低下していることが多いです。当院では、肩関節周囲の硬さと、肩甲骨・胸郭・頸部・体幹を含む上半身全体の動きの再教育を組み合わせて、ご本人とご家族が安心できる動作レベルを目指します。
また、術後に残る腕のしびれ・力が入らない状態は、骨折部位そのものではなく、腋窩神経や腕神経叢の過敏・三角筋や腱板の機能低下・肩甲骨の動きの不全が背景のことが多いです。整形外科的な評価と並行して、肩関節の質と再損傷予防を支える役割を担います。
なお、画像診断・抜釘判断・人工関節の評価は医療機関の専門領域です。当院では主治医のリハビリ計画と並行し、生活動作の質と再骨折予防を支える役割を担います。
肩甲骨と上腕骨の動きを分ける
腕を上げる動作は、上腕骨だけで動かしているのではなく、肩甲骨と上腕骨が2:1の比率で連動して行われます。術後はこの連動が崩れていることが多く、肩甲骨が動かないまま上腕骨だけで挙げようとして引っかかりや痛みが出ます。一つひとつの動きを丁寧に分けて再獲得していきます。
胸郭・頸部・体幹の連動の再教育
肩をかばうことで、胸郭・首・反対側の肩・体幹に出ている捻れや筋緊張を整え、上半身全体で支える感覚を再教育します。三角筋・腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)・前鋸筋・僧帽筋など、肩を支える筋群の機能を段階的に再活性化します。
日常動作の段階的な再獲得
挙上・外旋・内旋を組み合わせた結髪動作・結帯動作・洗髪・着替えなど、生活動作を見据えた動きの再構築を行います。「これなら大丈夫」と思える段階を一つずつ重ねていく方法を取ります。
反対側と再骨折の予防的アプローチ
上腕骨近位端骨折は、骨粗しょう症が背景にあることが多く、反対側や他部位の骨折リスクが高いことを意識して位置づけています。転びにくい身体づくり・両肩のバランス・体幹と下肢の安定性を整え、再骨折のリスクを下げます。
段階的に動作の質を整える
退院後・保険リハ卒業後は、おおよそ1週間に1回のペースをお勧めしています。動作が安定してきたら、徐々に間隔を延ばしていきます。
無理のない範囲で続けられる頻度を、ご本人・ご家族・主治医のリハビリ計画と相談しながら設計します。
転倒予防と長く腕を使える身体づくり
状態が安定してきたら、2〜4週に1度のメンテナンスに切り替えることをお勧めしています。
上腕骨近位端骨折は、反対側・他部位の骨折リスクが長く続くため、両肩・上肢・体幹のバランス・歩行と転びにくさを継続的に整え、長く腕を使える身体づくりを支えます。
動き続けることが、回復を支える
受傷後は症状に応じて、可能な範囲で動き続けることが、生活の質を最も大きく左右します。
肩は、毎日の生活で最も多くの方向に使う関節です。術後の数か月の取り組みが、半年後・1年後の腕の使いやすさを大きく決めます。挙上制限や夜間痛を抱えたまま動き続けると、反対側の肩や首・腰への負担が積み重なることもあります。ご家族の協力も大きな力になります。
ぜひ、ご家族と一緒にご来院ください。動きやすさが戻ると、外出する楽しみも戻ってきます。
※ 保有資格として、理学療法士を取得していますが、当院では整体師として活動しています。
※ 当院で提供するサービスは施術や運動指導であり、医療機関が提供するリハビリとは異なります。


