大村颯太が考えていること——動きを通じて人を見る

こんにちは、副院長の大村颯太です。
京都オステオパシーセンターOQの2階で、脳卒中後の自費リハビリ・歩行分析・下肢の問題(膝・股関節・足)を担当しています。

このブログでは普段、症状や治療方法について書いていますが、今日は少し趣を変えて、私自身が施術の中で何を見ているか、何を考えているか——その内側のことを、お話ししてみようと思います。

「OQには行ってみたいけど、大村ってどんな人なんだろう」と気になっている方に、少しでも私の人柄や考え方が伝われば嬉しいです。

目次

医療現場で出会った違和感

私はもともと理学療法士として、病院でリハビリに携わってきました。脳卒中・骨折・術後など、たくさんの方の回復に立ち会いました。それは間違いなく、私のキャリアの土台です。

でも、医療の現場で過ごす中で、消えない違和感がいくつもありました。

  • 負担の大きい手術が、本当に最善の選択だったのだろうか
  • 多剤投与(5種類・10種類の薬)が、結果として体を弱らせていないか
  • 寝たきりの延命治療は、その方が望んだ最期なのだろうか
  • そもそも、なぜこの方は病気になったのだろうか

日本の医薬品消費量は世界3位、寝たきりの方の数は世界1位、精神科の病床数も世界1位。これは医療従事者として誇れる数字ではありません。「予防」「再発防止」「健康そのものを作ること」に、もっと社会のリソースを向けたい——そう感じるようになりました。

「予防に勝る治療はない」。この言葉は、私の中でだんだんと重みを持つようになっていきました。

古本屋で出会った一冊

転機は、偶然立ち寄った古本屋でした。手に取った一冊が、アンドルー・ワイル博士の『癒す心、治る力』。そこで初めて知ったのが、「オステオパシー」という言葉でした。

オステオパシーは、解剖学・生理学に基づきながら、身体の構造や形態を整えることで、その人自身の自然治癒力を最大限に引き出す手技療法です。1874年にアメリカで生まれ、150年以上の歴史と独自の哲学を持つ医療体系です。

初めてその概念に触れた時、私はこう思いました。「これまで学んできた技術や理論とは、まったく別の次元の話だ」と。

そこからは、夢中で学び続けました。バイオメカセラピー、Spine Dynamics、入谷式インソール、ボバースアプローチ、バイニーアプローチ、アプライドキネシオロジー、エコロジカルアプローチ——気になるセミナーは片っ端から受講しました。大学院に進学して健康科学修士も取得しました。コーチングまで学びました。

振り返ると、それぞれが今の私の引き出しになっています。でも、軸になっているのはやはりオステオパシーの哲学です

「治る力は、あなたの中にある」

私が施術で大事にしている考え方を、ひとつだけ選ぶならこれです。

治る力は、外から与えられるものではない。あなた自身の中にある。

どんなに優れた施術も、薬も、手術も、本質的には「治る力」を引き出すための手助けにすぎません。施術者の役割は、患者さん自身の内側にある回復の力を、邪魔せず、最大限に発揮できるようサポートすること。私はそう考えています。

そして、回復のスタートラインは——施術者と患者さんが、共通のゴールを持ち、信頼できる関係性を築いた瞬間から始まります。私が問診と評価に時間をかけるのは、そのためです。

健康の容量という考え方

私が体を診るときに頭に置いているのが、「健康の容量」という考え方です。すべての人には、健康を保つための器(容量)があります。その器の中には、

  • 精神(ストレス・人間関係・心の状態)
  • 栄養(食事の質・量・タイミング)
  • 睡眠(時間・質・リズム)
  • 構造(骨格・関節・筋膜)
  • 運動(活動量・動きの質)
  • 環境(住環境・職場環境・気候)

——という6つの要素が入っています。これらが積み重なって、容量を超えた瞬間に「症状」が出る。

つまり、症状は「敵」ではなく、容量を超えたことを教えてくれるサインなのです。私たちはこのサインに耳を傾け、6要素のどこに偏りがあるかを一緒に探します。

OQで私が直接お手伝いできるのは主に「構造」と「運動」の領域です。残りの4要素については、必要なアドバイスをお伝えしますが、ご自身の意志と実践が欠かせません。「健康は、私たちと一緒に作るもの」——この姿勢を大切にしています。

“Infinite Variety / 千変万化”

もうひとつ、施術家としての心構えとして掲げているのが、“Infinite Variety / 千変万化”という言葉です。

意味は単純です。「使えるものはなんでも使う」

クライアント一人ひとりは、それぞれ固有の独自性を持っています。同じ「腰痛」「膝痛」でも、原因も背景も体の使い方もバラバラです。だから、ひとつの理論や流派に固執していたら、目の前の方を本当に助けることはできません。

オステオパシーを軸に置きながら、必要に応じてアプライドキネシオロジー・運動療法・インソール・コーチング的な対話——あらゆる引き出しを使います。理論より結果、形式より目の前の人。柔軟さと結果へのこだわりを、私の中の二本柱にしています。

「歩ける」を出発点と捉える

脳卒中後リハビリの現場で、ずっと感じていたことがあります。それは、「歩けるようになった」がリハビリの終点になってしまっているという現実です。

もちろん「歩けるようになる」は、患者さんと家族にとって計り知れない達成です。でも、私が見てきた多くの方は、退院後に「健側の膝が痛い」「すぐ疲れる」「転びそうで怖い」という新しい問題に直面していました。

歩けることは出発点であって、到達点ではない。「どのように歩けているか」「10年後も安全に歩けるか」——これが、私が脳卒中後の方を見るときの問いです。

近年の神経科学の研究では、慢性期(発症から半年以上経過した段階)でも、適切な刺激があれば脳は変化し続けることが分かってきています。「もう何年も経ったから変わらない」は、少し前の医学の理解です。OQの自費リハビリでは、この最新の知見を踏まえて、長期的な歩行の質を高めるサポートを提供しています。

院長・坂田との二人体制

OQが二人体制であることは、患者さんにとって大きな価値だと考えています。

院長・坂田雄亮は、全身性の問題・婦人科・自律神経・内臓・小児・自己免疫疾患などを専門とし、私は下肢・歩行・脳卒中後リハビリを専門とします。お互いの専門領域がきれいに補完しあう構造になっています。

難しいケースについては、頻繁に二人で意見を交換します。「この方の足の症状は内臓由来かもしれない」「この方の腰痛は歩き方からきてるね」——そういう対話が、日々起きています。一人の施術家では届かない領域に、二人体制だから届く。これがOQの強みです。

尊敬する思想と、誠実に向き合うこと

私が尊敬するアメリカの思想家、バックミンスター・フラーがこんな言葉を残しています。

“Small individuals can do something — that is, to act with integrity.”
(小さな個人にできること、それは誠実に行動することである)

急速にデジタル化・グローバル化が進む現代で、未来がどこに向かうのか、誰にも予測できません。でも、ただの一人の施術家にできることは、「目の前のクライアント一人ひとりに真摯に向き合い、結果にこだわること」だと思っています。

施術を通じて、薬や手術に頼り過ぎない人を一人でも増やすこと。日本人の健康寿命を、わずかでも延ばすこと。そのための小さな積み重ねを、毎日やっていきたい。それが私の願いです。

プライベートのこと

個人的なことも少しだけ。

子どもの頃は水泳(3〜10歳)、それから18歳までは野球をしていました。今はランニング・登山・合気道を続けています。合気道は、日々の動きや姿勢の指導にも生きていて、いまや私の身体観の大事な土台のひとつになっています。

それから、2児の父でもあります。子どもの足の発達を観察するのは、足育アドバイザーとして本当に学びの多い時間です。「子どもの土踏まずはいつ生まれるのか」「裸足で遊ぶことの大切さ」——子どもたちが教えてくれることは、施術の現場にも還元されています。

よくある質問(FAQ)

Q. なぜオステオパシーを選んだのですか?

A. 病院でのリハビリ経験を通じて「対症療法ではなく、本質的な健康を作る方法」を探していたときに、ワイル博士の『癒す心、治る力』でオステオパシーに出会いました。解剖学・生理学に基づきながら、自然治癒力を引き出すという哲学が、それまで私が学んだ技術とはまったく異なる次元のものに感じて、惹かれました。今では、私の臨床の軸になっています。

Q. どんな人に来てほしいですか?

A. 「自分の力で健全で豊かな人生を送りたい」と思っている方に、ぜひお会いしたいです。症状を「悪者」と捉えるのではなく、体からのサインとして向き合う気持ちを持っている方とは、特に良い変化を作れます。脳卒中後で「もっと歩きたい」と願う方、膝・股関節・足の問題で諦めかけている方、保存療法でできることを探したい方も、お気軽にどうぞ。

Q. 学びは今でも続けていますか?

A. はい、止めたことはありません。オステオパシーの新しいセミナー、足部・歩行のバイオメカニクス、脳科学、運動学習理論——常に何かを学んでいます。海外の論文・書籍も継続的に読んでいます。患者さんに最良のものをお届けするためには、自分自身が学び続ける以外に道はないと思っています。

Q. オフの時間はどう過ごしていますか?

A. 子どもたちと過ごす時間、ランニングや登山、合気道の稽古に充てています。山に登ると、自分の歩行の質が嫌でも露呈するので、仕事と趣味が分かちがたく結びついているような状態です。本もよく読みます。施術の合間に深呼吸をする時間、空を見上げる時間も大切にしています。

最後に

長くなりましたが、これが今の私です。動きを通じてその人を見て、その人の中にある「治る力」を引き出すお手伝いをする——それが、施術家としての私の役割だと思っています。

もし「OQに行ってみたい」「大村に診てもらいたい」と思ってくださったら、ぜひお気軽にご予約ください。脳卒中後の自費リハビリも、膝・股関節・足の問題も、歩行分析も、まずは一度お話ししましょう。

あなたの「治る力」を、一緒に引き出していけたらと思います。

参考文献

本記事の哲学・施術観の背景にある主な書籍と思想を紹介します。

私の考え方の原点となった書籍

  • Weil, A. Spontaneous Healing: How to Discover and Embrace Your Body’s Natural Ability to Maintain and Heal Itself. Knopf, 1995.(邦訳『癒す心、治る力——自発的治癒とはなにか』アンドルー・ワイル, 上野圭一訳, 角川書店, 1995)
  • Still, A. T. The Philosophy of Osteopathy. A. T. Still, 1899.(オステオパシー創始者の原典)
  • Earls, J. Born to Walk: Myofascial Efficiency and the Body in Movement (2nd ed.). North Atlantic Books, 2020.
  • Fuller, R. B. Operating Manual for Spaceship Earth. Southern Illinois University Press, 1969.(バックミンスター・フラー)
  • Shumway-Cook, A., & Woollacott, M. H. Motor Control: Translating Research into Clinical Practice (5th ed.). Wolters Kluwer, 2017.

関連する研究論文

  • Hornby, T. G., Reisman, D. S., Ward, I. G., et al. (2020). Clinical Practice Guideline to Improve Locomotor Function Following Chronic Stroke. Journal of Neurologic Physical Therapy, 44(1), 49–100. https://doi.org/10.1097/NPT.0000000000000303
  • Engel, G. L. (1977). The need for a new medical model: a challenge for biomedicine. Science, 196(4286), 129–136.(バイオサイコソーシャルモデル)https://doi.org/10.1126/science.847460
  • Kandel, E. R. (2001). The molecular biology of memory storage: a dialogue between genes and synapses. Science, 294(5544), 1030–1038.(脳の可塑性)https://doi.org/10.1126/science.1067020

※ 本記事は私個人の考え方や経験に基づくエッセイです。OQの施術や指導は、保有資格と科学的根拠を踏まえた上で、個別に提供しています。


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執筆:大村颯太(京都オステオパシーセンターOQ 副院長・2階担当)
専門:脳卒中後の自費リハビリ/下肢症状(股関節・膝)/腰痛/歩行分析/インソール
保有資格:理学療法士(佛教大学首席卒)/健康科学修士/JEFPA認定足育アドバイザー/ブレインアクティベート協会 発達ケア・アドバイザー上級

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この記事を書いた人

大村颯太
・理学療法士
・健康科学修士
・発達ケア・アドバイザー上級

Sota Omura
・Physiotherapist
・Master of Health Science
・JEFPA Certified Foot Care Advisor
・Developmental Care Advisor

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