「走るのをやめれば膝は治る」——整形外科でそう言われたとき、素直に「はい」と言えなかった方は少なくないはずです。
走ることが生活の中の楽しみで、走りをやめれば気持ちまでくすんでしまう。そんなランナーにとって「走るのをやめる」は、ほぼ最終手段のはずです。
こんにちは、副院長の大村颯太です。前回の記事では「ランナー膝はオステオパシーの視点で見るとどう違うか」というお話をしました。今回は続編として、走る距離を減らさずに、膝の負担を減らす具体的な方法をお伝えします。
「休む」以外の選択肢を持つ
整形外科で「膝を休めて」と言われて、何週間・何ヶ月も走れずにストレスを溜めているランナーの方は多いです。休むことで炎症は確かに落ち着きます。でも、走り始めるとまた同じ場所が痛くなる——根本の原因が変わっていないからです。
もちろん、強い炎症が出ている急性期は走行休止が必要なこともあります。でもそれを除けば、走りながら体を変えていくアプローチは十分に可能です。
OQでは、走るのをやめさせるのではなく、走り方の質と体の使い方を変える方向で一緒に考えます。今回は、その具体的な4つの視点をお話しします。
視点①:着地の角度を変える
ランナーズニー(腸脛靭帯炎)の多くは、踵着地時の下肢のねじれが関係します。
- 足部が過回内(内側に倒れる)→ 下腿が内旋 → 膝が内に入る → 腸脛靭帯が擦れる
- 歩幅が大きすぎる → 踵から強く着地 → 衝撃が膝に集中
- 上体が後ろに残る → ブレーキ動作が増えて膝の負担増
自分で微調整できること:
- ピッチ(ケイデンス)を5%上げる → 歩幅が自然に短くなり、衝撃が分散される
- 踵から「ミッドフット寄り」の着地に意識を変える → 下肢の縦揺れが減る
- 走行フォームの動画を真横と後ろから撮って自己観察する
- 距離計だけでなく、ピッチ計のあるGPSウォッチで数値化する
ピッチを上げるのは最初は違和感がありますが、1〜2週間で慣れます。慣れる頃には、膝の痛みが目に見えて減ってくることが多いです。
視点②:片脚立ちの質を上げる
ランニングは、突き詰めると連続した片脚立ちです。ということは、片脚立ちの質がそのまま走りの質になります。
OQで確認するポイントは——
- 片脚立ちで骨盤が水平に保てるか(中臀筋の働き)
- 足趾で地面をしっかり掴めるか
- 膝が正面を向いているか、内に入らないか
- 体幹が左右にぶれずに、軸が立っているか
どれか1つでも崩れていれば、走るたびに膝へのストレスが累積します。逆に言えば、片脚立ちが整えば、走りは自然に変わるのです。
ランナー膝で来られる方の多くは、走りに問題があるというより、片脚で立っているときから既にズレています。走りはそれを倍速で見せているだけ、というのが私の臨床実感です。
視点③:股関節の「後ろに伸びる」動き
走るときに意外と見落とされるのが、股関節の伸展(脚が体の後ろに伸びる動き)です。
現代人の多くは座位時間が長く、股関節の前面(腸腰筋)が硬く短くなっています。すると脚が後ろに伸びにくい。伸びない分を、腰を反らせることで代償する——結果、腰と膝の両方に負担がかかります。
自宅でできるケア:
- ランジストレッチ(腸腰筋を伸ばす)を走行前後に1分ずつ
- お尻の筋肉(大臀筋)を意識的に使う坂道ダッシュ・短距離坂走
- 仰向けで膝を抱える反対側の脚を伸ばす(トーマステスト型ストレッチ)
「腿の前で走っている」感覚があるランナーは、まさにこの状態です。お尻で蹴る感覚が戻ると、走りが軽くなります。
視点④:走らない日にこそ「片脚立ち刺激」
走行量を減らせない・減らしたくない日でも、夜に2〜3分の片脚立ちバランスワークを入れるだけで、走りの質は変わります。
- 裸足で片脚立ち30秒 × 左右3セット
- 目を閉じて片脚立ち15秒 × 左右2セット
- バランスディスクやタオル巻きの上で片脚立ち
- 歯磨きの間、片脚立ちで過ごす(生活に組み込む)
これを続けた方は、同じ距離を走っても膝の痛みが出にくくなる傾向があります。走力アップのためのトレーニングではなく、走りの質を保つための地味な準備運動、というイメージです。
OQでのサポート
OQでは、ランナーの方に対して次のような評価とアプローチをしています。
- 走行フォームの動画分析——ねじれや左右差を確認
- 片脚立ちの質の評価——骨盤・体幹・膝のアライメントを動的に見る
- 股関節・足関節の手技調整——可動域と筋膜の動きを整える
- 段階的なトレーニング計画——大会の予定と現状からプランを組む
「走らないでください」と言うのではなく、走り続けるための体の使い方を一緒に作っていきます。大会までの期間が決まっているランナーの方は、早めにご相談いただくほど選択肢が増えます。
よくある質問
Q. 痛みがある状態で走り続けてもいいんですか?
A. 痛みのレベルによります。10段階で3〜4以下で、走り終えた翌日に増えていない範囲なら、走りながら体を変えていくのは可能です。一方、走り始めから痛い、走った翌日に強く痛む、関節が腫れる——こうした状態のときは、まず炎症を落ち着かせることを優先します。「痛みのライン」を一緒に見極めるところから始めましょう。
最後に
走ることをやめずに膝の痛みを減らす——これは決して特別な人にしかできない選択肢ではありません。走り方の質、片脚立ちの質、股関節の使い方——どれも、自分の身体への理解を深めれば変えていける部分です。
「走り続けたい」というその気持ちこそが、体を変えていく原動力になります。一人で抱えず、ぜひご相談ください。
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執筆:大村颯太(京都オステオパシーセンターOQ 副院長・2階担当)
専門:脳卒中後リハビリ/下肢症状(股関節・膝)/腰痛/歩行分析/インソール

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