触れることの科学——オキシトシン、絆、そしてオステオパシー

「施術中、何もしていないときでも、なぜか落ち着くんです」——こうおっしゃる方がよくいます。「帰りの電車で眠ってしまった」という方も。これは単なる気のせいではなく、体の中で実際に化学物質が変化しているからです。

目次

オキシトシン——「愛情ホルモン」の本当の姿

オキシトシンは「感情ホルモン」「絆のホルモン」と呼ばれますが、その役割は感情だけではありません。視床下部で作られ、脳下垂体から分泌されるこのホルモンは、非常に幅広い作用を持っています。

D.F.スワープの研究を含む複数の先行研究が示すところでは、オキシトシンは授乳中の母子の身体的接触時、信頼できる施術者に手当てられている時などに分泌されることが知られています。注目すべきは「信頼できる施術者」という条件です。ただ触れるだけではオキシトシンは出ません。安全だと感じられる関係性と、その中での触れ——それがセットになってはじめて機能します。

オキシトシンが体にもたらすこと

① コルチゾール低下
ストレス反応の中枢を鎮めることで、筋肉の緊張が緩み、心拍が落ち着き、呼吸が深くなります。
② 副交感神経優位へ
「闘争・逃走」から「休息と消化」のモードへ。内臓の動きが活発になり、疼痛を和らげるメカニズムが安定します。
③ 結合組織の張力変化
一部研究ではオキシトシン分泌により結合組織の弾力性が変化することが示唆されています。硬膜などにまで影響が及ぶ可能性があります。

迷走神経と「安全」の感覚

Stephen Porgesの多場理論(Polyvagal Theory)によれば、神経系は常に周囲の環境が「安全か危険か」を監視しています。安全の信号が届くと、神経系は「安心モード」に入り、筋肉は自然に弛み、呼吸は深くなります。施術中に患者さんが落ち着くのは、信頼できる手から安全の信号を受け取った神経系が、深いリラックスを許可するからです。

触れることを提供することの意味

A.T.スティルは、「人間の体には内在する治癒力——自己をいやす能力——がある」と考えました。神経科学が示す「触れることの効果」は、この哲学を分子レベルで裏付けるものだと思っています。身体的なケアをご希望の方は、ご相談ください。産後のオステオパシー妊婦のケアの症状ページもご参照ください。

ご予約・ご相談

京都オステオパシーセンターOQ|阪急大宮駅 徒歩2分
完全予約制・1階(院長:坂田)

オンライン予約はこちら

執筆:坂田雄亮(院長)
参考:D.F.Swaab 著『We Are Our Brains』(2014) / S.Porges 著『The Polyvagal Theory』

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この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

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