骨粗鬆症の予防として「カルシウムを摂りましょう」と言われる。間違いではないが、骨が弱くなる本当の理由をカルシウム不足だけに帰着させるのは、話が単純すぎる。人類の祖先はカルシウムを意識的に摂取していなかった。それでも骨折しやすい老人は今よりずっと少なかったという古病理学的な記録がある。なぜか。
骨は「動かすと育つ」構造だ
骨は静的な構造物ではない。常に古い骨が壊され(破骨細胞)、新しい骨が作られる(骨芽細胞)という動的なリモデリングを繰り返している。このリモデリングを促す最大の刺激は、体重負荷と筋肉の牽引力だ。歩く・走る・持つ・引く——そういう動きが骨に「強くなる必要がある」というシグナルを送る。
狩猟採集時代の人間は、毎日15〜20km歩き、重いものを運び、不整地を走った。現代の高齢者の多くは、1日の歩行数が2000〜3000歩に満たない。骨にとっての最大のミスマッチは「動かなさ」だ。
ビタミンDという欠けたパーツ
骨の形成にはカルシウムだけでなく、ビタミンDが不可欠だ。ビタミンDの主要な供給源は食事ではなく、紫外線による皮膚での合成だ。狩猟採集時代の人間は毎日屋外で数時間を過ごした。現代の都市生活者の多くは日中のほとんどを室内で過ごす。日本人の成人の約8割がビタミンD不足または欠乏状態にあるという研究もある。これは食事の問題ではなく、生活環境のミスマッチだ。
「過剰なカルシウム補給」の落とし穴
カルシウムを大量に補給してもビタミンDが不足していれば、腸管からの吸収が妨げられる。マグネシウム、ビタミンK2、タンパク質——これらが骨形成の共同作業者として必要だ。カルシウムだけを大量に補給することは、コンクリートに水だけを加えるようなもので、材料が揃わないと固まらない。
骨粗鬆症と内臓・体質の接続
骨の健康は、腸の健康と深く関わっている。腸内環境が悪化するとカルシウムの吸収が落ちる。ストレスによるコルチゾールの慢性高値は骨形成を抑制し骨吸収を促進する。「骨が弱い」という問題は、骨単体を見るだけでは解決しない。消化器・自律神経・ホルモン環境を含む全体として評価することが重要だ——これはオステオパシーの「体全体を診る」アプローチが最も得意とするところだ。
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