痛みの慢性化——中枢性感作という神経系の「音量上昇」

ケガが治ったはずなのに、痛みだけが残り続ける。3か月、6か月、1年——「異常なし」と言われるのに体はずっと痛い。これが慢性痛の現実だ。なぜ痛みは慢性化するのか。

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痛みは「組織の損傷」を反映していない

急性痛は「組織が傷ついている」というシグナルだ。しかし慢性痛になると、痛みと組織の状態が乖離し始める。MRIでヘルニアが消えても痛みが残る。骨折が治癒しても痛みが続く。逆に、大きな損傷があっても全く痛みを感じない場合もある。

これは「痛みは脳が作り出すもの」という現代の痛み科学の基本認識を示している。組織の損傷が痛みの「原因」ではなく、脳が「危険だ」と判断したときに痛みが生成される。

中枢性感作——脊髄と脳の「音量上昇」

痛みの刺激が脊髄に繰り返し入力されると、脊髄後角ニューロンの感度が上昇する(中枢性感作)。これはWind-up現象と呼ばれ、同じ刺激に対してどんどん強い痛みを感じるようになる状態だ。さらにこの感作が脳にまで及ぶと、本来は痛みを感じない軽い刺激(触れる・動かす)でも強い痛みを感じる「アロディニア」が生じる。

進化医学的に見ると、これは脅威にさらされ続けた神経系が「常時警戒モード」に固定された状態だ。慢性的なストレス・睡眠不足・恐怖・孤立が、この感作を悪化させる。

「安全だ」という体験が痛みを変える

慢性痛の改善に最も重要なのは、神経系が「安全だ」と学習し直すことだ。OQのオステオパシーは、強い刺激を避け、体が「安全モード」に入れる環境をつくることを最優先にする。迷走神経の活性化、頭蓋・頸椎・横隔膜の緊張解放を通じて、神経系の過警戒状態を段階的に緩和する。

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この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

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