虫垂炎になったら手術で取り除けばいい——そう思われてきた虫垂だが、「無用の長物」という評価は現代では過去のものになりつつある。進化医学的に見ると、虫垂は「退化した器官」ではなく、「機能が変化した器官」だ。
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虫垂は腸内細菌の「避難所」だった
デューク大学のビル・パーカー博士らは、虫垂が腸内細菌の「セーフハウス(避難所)」として機能するという仮説を提唱した。下痢などで腸内細菌が大量に流出した後、虫垂に保存されていた有益な腸内細菌が腸管に再定着するという機能だ。
この仮説を支持するのは、虫垂が豊富な免疫組織(リンパ組織)を持ち、腸内細菌と免疫系の調整に関与していることだ。また、虫垂を切除した人は術後に腸内細菌叢が乱れやすいというデータもある。
なぜ虫垂炎になるのか
虫垂炎の多くは、虫垂内腔が糞石(便の固まり)や腸内細菌のバランス乱れによって閉塞し、炎症が起きる。進化医学的には、食物繊維の摂取不足による腸内環境の変化、慢性的な腸管炎症が虫垂炎のリスクを高めると考えられている。狩猟採集民の虫垂炎発生率は現代人よりはるかに低い。
「無用の長物」を見直す進化医学的視点
「退化器官」「無用の長物」と呼ばれてきた体の部位——虫垂、扁桃腺、アデノイド、尾骨——の多くは、再評価が進んでいる。進化はエネルギーコストのかかる器官を「本当に不要」になれば消去する。残っているということは、何らかの機能がある可能性を示唆する。
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