Survival of the Sickest——病気の遺伝子がなぜ消えなかったのか

「Survival of the Sickest(翻訳:迷惑な進化)」——シャロン・モアレムの著書のタイトルだが、これは進化医学の重要な逆説を指す。なぜ「病気になりやすい遺伝子」は自然選択によって消えなかったのか。

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鎌状赤血球貧血とマラリアの「ダブルエッジ」

最も有名な例が鎌状赤血球貧血だ。ヘモグロビン遺伝子の変異によって赤血球が鎌状に変形し、重篤な貧血を引き起こす「病気の遺伝子」——しかしこの変異を1コピー持つ「保因者」は、マラリアに対して著しく強い耐性を持つ。

マラリアが猛威を振るうアフリカでは、この変異を持つことが生存上の優位性をもたらした。「病気を起こす遺伝子」が、別の致命的な病気への抵抗として機能した——これが「病者の生存」の意味だ。

ヘモクロマトーシスとペストの関係

体内に鉄を過剰蓄積するヘモクロマトーシスも同様だ。鉄過剰は現代では肝障害・糖尿病・心疾患を招くが、ペストが猛威を振るった中世ヨーロッパでは、体内の鉄濃度を下げることがペスト菌(鉄を必要とする)への抵抗力につながった可能性がある。

2型糖尿病リスクと飢餓への適応

インスリン抵抗性を高める「倹約遺伝子」は、食料が不安定な時代にはエネルギーを効率よく蓄える適応だった。現代の高カロリー食と組み合わさって初めて「糖尿病リスク遺伝子」になる。環境が変わらなければ、この遺伝子は「優れた生存遺伝子」のままだった。

OQの臨床への示唆

「病気の遺伝子を持っている」という事実は、その人の体の設計を理解する入口だ。遺伝的な背景と現代環境のミスマッチをどう小さくするか——これが進化医学的な予防・治療の根本的な問いだ。OQでは、遺伝的傾向と体の状態を合わせて評価し、その人固有の「ミスマッチ」に対応したアプローチを取る。

翻訳版表紙のモアレム博士の言葉「僕らはいつか壊れるようにできているさ」 そう、けれど、その儚さは偶然じゃない。生き延びるために支払い続けてきた、途方もなく長い勘定の最後の一行なのだと。

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この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

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