PMSを進化医学から読む——月経前の「嵐」はなぜ起きるか

月経の1〜2週間前から始まるイライラ、むくみ、頭痛、気分の落ち込み——PMSは「気のせい」でも「精神的に弱いから」でもありません。


PMSのホルモン的背景

月経周期の黄体期(排卵後から月経まで)には、プロゲステロンが上昇しその後急落します。この急落が脳内の神経伝達物質——特にGABA(抑制系)とセロトニン——のバランスに影響し、不安・イライラ・気分の波として現れます。

プロゲステロンの代謝産物(アロプレグナノロン)はGABA受容体に作用します。プロゲステロンが安定しているときはリラックス方向に働きますが、急激な変動期には逆に神経を過敏にする方向に働くことがあります。


なぜ現代でPMSが強いか——月経回数3倍化との関係

前の記事で触れた「月経回数3倍化」がここでも関係します。狩猟採集時代の女性は生涯150回の月経周期でこのホルモン変動を経験しました。現代女性は450〜500回。

繰り返しのホルモン変動への暴露が、神経系のホルモン感受性を変化させる可能性があります。慢性的な交感神経優位状態(軸5)と月経周期のホルモン変動が重なると、PMSの症状が増幅しやすくなります。

さらに、現代の食環境(精製糖質・超加工食品)はインスリン抵抗性を高め、それが性ホルモン代謝に影響します。「食べたいものが変わる」というPMS症状は、血糖調節とホルモン代謝の相互作用を反映しています。


「整える」とはホルモン変動の振れ幅を小さくすること

PMSに対して「ホルモン変動そのものをなくす」ことはできません。進化的に設計された月経周期のメカニズムは、薬でコントロールすることはできても根本から変えることはできない。

進化医学が示す方向は:慢性ストレスの軽減(交感神経系の慢性活性化を下げる)、睡眠の質の確保(概日リズムとホルモン分泌の同期)、腸内環境の改善(腸内細菌がエストロゲン代謝に関与)。これらが「ホルモン変動の振れ幅を小さくする」方向に働きます。


OQがPMSの方に関わるとき

PMSで来られた方に、OQは骨盤底の状態、横隔膜の動き、仙骨・腸骨のバランス、自律神経のパターンを評価します。慢性的な骨盤内の充血・緊張パターンと、慢性ストレスによる交感神経優位状態が重なって症状を増幅させていることが多い。「PMSを消す」のではなく、「骨盤内環境と自律神経のバランスを整えてホルモン変動をよりなめらかにこなす身体に近づける」アプローチです。

OQ進化医学コラムシリーズ → シリーズ一覧

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この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

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