PMSが「ひどくなった」と感じたら——ホルモンと自律神経の話

「30代になってからPMSがひどくなった気がする」

この言葉、外来でよく聞きます。学生のころはなんとも感じなかったのに、仕事が忙しくなった30代から、月経前の1〜2週間が毎月しんどくなってきた、という方。

加齢のせいでしょうか。ホルモンが変わったから? ——たしかにそれもあります。でも、もう少し具体的に言うと、「自律神経の余裕がなくなってきた」ことが大きく関係しています。

目次

PMSと自律神経は、なぜつながるのか

月経前の数日間、体の中ではプロゲステロン(黄体ホルモン)が急激に下がります。このプロゲステロンには、脳の「GABA受容体」に作用して神経を落ち着かせる働きがあります。つまり、月経前は「脳が落ち着きにくい状態」になるのが正常な生理でもあるんです。

ここで問題になるのが、もともとの自律神経の状態です。

日常的に交感神経が優位になりやすい生活——仕事のストレス、睡眠不足、食事が不規則、スクリーンタイムが長い——こういった状態が続いていると、自律神経系は「余裕のない状態」になります。そこにホルモンの揺らぎが加わると、体は過剰に反応しやすくなる。

「昔より生活がハードになった」という自覚がある方ほど、PMSが年々ひどくなる傾向があるのは、そういう理由です。

骨盤と頭蓋が関係する、という話

オステオパシーの視点から、PMSにかかわる体の場所で重要なのが仙骨です。

仙骨は骨盤の中心にある骨で、副交感神経の重要な出口のひとつです(仙骨神経叢)。副交感神経は「休む、回復する、消化する」ための神経系です。

仙骨周囲の筋膜や靭帯が硬くなったり、骨盤全体の動きが制限されると、この副交感神経の働きが阻害されます。すると、体は「休む」モードに入りにくくなる。睡眠が浅くなる。月経前の不調が回復しにくくなる。

もうひとつ、頭蓋骨も関係します。頭蓋骨の底部には迷走神経という、体全体の副交感神経の大きな幹が通っています。後頭骨(頭の後ろ)の動きが制限されると、この迷走神経の働きも落ちやすくなる。

そして仙骨と頭蓋骨は、硬膜という膜でつながっています。骨盤の緊張が頭まで伝わり、頭の緊張が骨盤まで伝わる——これがオステオパシーで「頭蓋仙骨系」と呼ぶ構造です。

35歳、月経前の頭痛とむくみと過食

以前、こんな方が来院されました(個人が特定されないよう事例を組み合わせています)。

35歳、デスクワーク。月経前の1週間は頭痛、むくみ、過食衝動の3つが毎回セットでやってくる。市販の漢方(当帰芍薬散)を試したが効果が感じられない。婦人科で「ホルモンは正常範囲」と言われた。

触診すると、後頭骨と仙骨の動きの制限が明らかでした。横隔膜も硬い。呼吸が浅く、副交感神経系が全体に低活性な印象でした。

施術は頭蓋底(後頭骨周囲)と横隔膜、仙骨周囲を中心に行いました。「子宮や卵巣には直接触れない」施術です。

2周期目から、頭痛の頻度と強さが明らかに落ちた、と報告がありました。むくみも「ゼロではないが、前ほど気にならなくなった」。過食については「何かを食べたいという感覚は残るが、止まれるようになった」とのことでした。

ホルモンに直接触れるわけではありません。でも、ホルモンの揺らぎに対して体が「うまく応答できる状態」を作ることは、できます。

「ひどくなった」は、体の正直なサイン

PMSが年々悪化しているとしたら、それは「体質が悪化した」というより、「体の余裕が少なくなっている」ことへの警告サインかもしれません。

鎮痛剤や漢方を使いながら月経周期をやり過ごすこと、それ自体を否定はしません。でも、毎月それを繰り返しながらじわじわ悪化しているなら、「体がどういう状態にあるか」を一度ちゃんと確認する価値があると思います。

PMS症状でお悩みの方は、PMS・月経前症候群とオステオパシーのページもご覧ください。


京都オステオパシーセンターOQ 院長・坂田雄亮(BSc Ost)が担当します。ご予約はオンライン予約または075-822-3003まで。

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この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

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