骨盤底機能不全を進化医学から読む——直立二足歩行が骨盤底に課した代償

尿漏れ・骨盤臓器脱・出産後の骨盤底のゆるみ——「年のせい」「出産のせい」で終わらせていませんか。

進化医学的には、これらには明確な背景があります。


四足歩行と直立二足歩行で骨盤底の役割が変わった

四足歩行の動物の骨盤底は「後壁」です。水平に伸びた骨盤の後方にある筋膜・筋肉で、内臓を後ろから支える役割が主です。

人間が直立二足歩行に移行したとき、骨盤底は「底」になりました。重力方向に対して下から内臓を支える——子宮・膀胱・直腸の重量を、骨盤底の筋膜・筋肉が常に下から受け止め続けます。

これは設計の根本的な変更です。四足歩行の動物では骨盤臓器脱はほぼ起きません。人間では人生の中で一定の頻度で起きます。


骨盤底は「呼吸の一部」でもある

骨盤底は単独で機能しているわけではありません。横隔膜・腹横筋・多裂筋と連動した「コアの圧力システム」の一部です。息を吸うとき横隔膜が下がり、それに連動して骨盤底もわずかに下降します。息を吐くとき逆に上昇します。

この連動が正常に機能しているとき、くしゃみ・咳・重いものを持つときにも骨盤底は自動的に対応します。慢性的な浅い呼吸(胸式呼吸)や横隔膜の機能低下は、この連動を崩し骨盤底への負荷を増大させます。


出産がリセットを引き起こす

出産では骨盤底の筋肉・筋膜・神経に直接的な負荷がかかります。特に経腟分娩では陰部神経への影響があることが知られています。産後の骨盤底機能不全——尿漏れ・骨盤重感・性交痛——はこの影響によります。

進化的には、難産・多産が骨盤底に繰り返しの影響を与え続けることは、直立二足歩行の設計コストのひとつです。


OQが骨盤底機能不全に関わるとき

OQでは骨盤底だけを診るわけではありません。横隔膜の動き(骨盤底との連動)、仙骨・腸骨・恥骨の関係、腸腰筋・梨状筋の緊張、足底のアーチ——骨盤底は全身の荷重パターンの「最終出口」です。骨盤底を直接アプローチするだけでなく、「なぜこの人の骨盤底に過剰な荷重がかかっているか」を全身から読み取ることが出発点です。

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この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

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