PCOSと進化医学——「倹約遺伝子」が現代環境で引き起こすこと

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、月経不順・排卵障害・高アンドロゲン血症を特徴とし、不妊の主要原因のひとつです。生殖可能年齢の女性の約10〜15%に見られます。

なぜこんなに多いのか。進化医学には興味深い視点があります。


倹約遺伝子仮説とは

遺伝学者のJames Neel(1962年)が提唱した「倹約遺伝子仮説」があります。食糧が不安定だった時代、エネルギーを効率よく蓄積できる遺伝子型——インスリン感受性が高く、少ない食物から多くのエネルギーを取り込める——を持つ個体が生存に有利だった。

これが「倹約遺伝子」です。飢饉環境では生存を助けるこの遺伝子型が、常に食物が豊富で糖質過多の現代環境では、インスリン抵抗性・高血糖・脂肪蓄積の方向に働きます。


PCOSとインスリン抵抗性の深い関係

PCOSの約70%にインスリン抵抗性が認められます。インスリン抵抗性があると、膵臓がより多くのインスリンを分泌しようとします。この過剰インスリンが卵巣に作用してアンドロゲン(男性ホルモン)の産生を促進——これがPCOSの主要なメカニズムのひとつです。

進化的に見ると、PCOSの素因(インスリン感受性の高さ・エネルギー蓄積効率)は、食物が乏しい環境では生存と繁殖を助けた可能性があります。しかし超加工食品・精製糖質・運動不足の現代環境では、その同じ素因が卵巣機能を乱す方向に作用します。


月経回数3倍化との重複

PCOSはすでに触れた「月経回数3倍化」とも重なります。排卵障害があるPCOSの場合は月経回数が少なくなりますが、炎症・ホルモン不均衡・インスリン抵抗性という背景には、現代食・運動不足・ストレスという軸2・軸5のミスマッチが深く関わっています。


OQがPCOSの方に関わるとき

PCOSで来られた方に、OQは骨盤底・仙骨・腸腰筋の状態、横隔膜の動き、自律神経系のバランスを評価します。インスリン抵抗性・慢性炎症・ホルモン不均衡は「骨盤内の血流パターン」「自律神経の慢性ストレス状態」と連動しています。「PCOSを治す」のではなく、「骨盤内環境をより機能しやすい状態に近づける」アプローチです。

OQ進化医学コラムシリーズ → シリーズ一覧

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この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

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