「首が痛くて来たのに、お腹のほうを触られた」という経験をした方がいるかもしれません。これは、施術者が迷子になっているわけではありません。首と横隔膜と内臓は、解剖学的にきちんとつながっています。
横隔膜は「首から生まれた」
横隔膜を動かす神経は横隔神経(phrenic nerve)といい、頸椎のC3・C4・C5から出ています。発生学的にも、横隔膜はもともと首の近くで形成され、発達とともに胸腔と腹腔の境界まで下降してきた組織です。つまり、首と横隔膜は神経的・発生学的に親戚なのです。
迷走神経という「接続ケーブル」
首の深部には迷走神経が走っています。脳幹から出て頸動脈の横を通り、横隔膜を抜けて腹腔の臓器まで——心臓・肺・胃・腸のほぼすべてをつなぐ体最大の副交感神経です。
首の深層筋の慢性的な緊張や、C1・C2の関節の詰まりがあると、この迷走神経への物理的な影響が生じることがあります。「首が痛い人は胃腸も弱い」は、統計的な相関ではなく解剖学的な理由があります。
なぜ首がそんなに緊張するのか
胸郭が固い——呼吸が浅くなる——横隔膜が十分に動かない——首の補助呼吸筋(胸鎖乳突筋・斜角筋)が過剰に働く——首が緊張する。このルートで首の慢性痛が維持されている方は少なくありません。
あるいは、肝臓の筋膜の緊張が横隔膜を下から引っ張り、横隔膜が胸郭を引っ張り、その代償で首の筋肉が緊張する——という内臓由来のルートもあります。だから「首を揉む」だけでは戻ってくる。
OQで首の施術をするとき
首の痛みの方を診るとき、胸郭の可動性、横隔膜の動き、内臓の状態、頭蓋底の緊張——全体を評価した上で「駆動因子」を探します。内臓や横隔膜から整えたほうが、首の緊張が自然に緩むことがあります。
首が痛いのに横隔膜を触られた方——それは、あなたの体が「下から引っ張られている」サインだったかもしれません。
→ 関連ページ:首の痛み・頸椎症とオステオパシー

コメント