頭痛は頭の問題じゃない——脳という司令室から、体全体を診る

「頭が痛いんです。ずっと前から。病院では異常なしと言われて……」

こう話してくれた方が、先日来院されました。40代の女性で、片頭痛歴は10年以上。神経科でも婦人科でも「特に問題ない」と言われ続けていた。

私が最初に確認したのは、頭ではなかった。横隔膜でした。

施術の様子
目次

脳は「頭の中にある」だけじゃない

オランダの神経科学者D.F.スワープは著書の中で、こんな表現を使っています。脳は「チャーチルの地下戦争司令室」のようなものだ、と。

第二次世界大戦中、ロンドンの地下に設けられたその司令室では、陸・海・空すべての情報が集まり、優先順位が判断され、指令が出された。脳もそれと同じで、体中から情報を受け取り、ホルモン・自律神経・運動系を統括しながら、24時間休まず働いている。

だとしたら、司令室に問題が起きたとき、影響が出るのは頭だけのはずがない。逆に、体の各部からの情報が乱れていたら、司令室も正常に機能できない。

頭痛とは、多くの場合「頭の問題」ではなく、この司令系統のどこかに生じた乱れが、頭という出口から現れているものです。

視床下部が「頭痛の出発点」になる理由

片頭痛・群発頭痛・緊張型頭痛——これらに共通して関わっているのが、脳の深部にある視床下部(hypothalamus)です。

視床下部は体温・睡眠・食欲・ホルモン分泌・自律神経のすべてを調節する中枢です。群発頭痛に対して脳深部刺激(DBS)が有効なのは、視床下部に直接働きかけることで頭痛発作が止まるからです——これは「頭痛が脳の制御系の問題である」ことの、ひとつの証拠です。

視床下部はまた、ストレス・睡眠不足・ホルモン変動に非常に敏感です。更年期に頭痛が増える方が多いのは偶然ではありません。エストロゲンの乱高下が視床下部の「設定」を乱し、頭痛の閾値が下がるからです。

では、なぜ「横隔膜」から診るのか

オステオパシーでは、頭と体は切り離せないと考えます。具体的な経路がいくつかあります。

① 硬膜(dura mater)の連続性
脳を包む硬膜は、脊髄を通って仙骨まで一枚の膜として続いています。この膜に張力がかかる——たとえば骨盤の歪みや脊椎の緊張——と、その張力は頭蓋内にまで伝わります。頭蓋の中の「圧」が変わることで、頭痛が起きやすくなる。

② 横隔膜と頭蓋の連動
呼吸をするたびに横隔膜は動きます。その動きは胸郭を介して胸椎・頸椎へと伝わり、最終的に頭蓋の微細な動きにも影響します。横隔膜が固まっていると——座り仕事・ストレス・浅い呼吸などで——この連動が失われ、頭蓋への「波及」が起きにくくなります。

③ 迷走神経(vagus nerve)
脳幹から出て、心臓・肺・消化器へとつながる迷走神経。この神経の緊張状態が、頭痛の慢性化・消化不調・睡眠障害を同時に引き起こすことがあります。「頭痛があると胃もおかしい」という方は珍しくありませんが、それは偶然の一致ではありません。

📋 症例メモ(個人特定を避けた形で記載)

40代女性・片頭痛10年・月4~6回

神経科・婦人科での検査では異常なし。市販の鎮痛剤で対応していたが、最近は薬が効きにくくなってきた。仕事はデスクワーク中心。「肩こりも常にある」「生理前に頭痛が悪化する」との訴え。

評価では、横隔膜の可動性低下(特に右)、胸椎上部の伸展制限、頸椎〜後頭骨移行部の緊張が著明。頭蓋の評価では左側頭骨の動きが制限されていた。

初回:横隔膜・胸椎・後頭下筋群へのアプローチ。施術後「首が軽い」とのフィードバック。
3回目:「先月は頭痛が1回だけだった」。生理前の悪化も以前より軽減。
5回目:頭痛の頻度は月1回以下に。鎮痛剤の使用なし。

※症例は複数の事例を組み合わせた内容です。特定の患者さんを示すものではありません。

「治った」ではなく「体が整った」

この方が変わったのは、頭痛を「消した」からではありません。体が自分で調節できる状態に戻ったから、頭痛が起きにくくなった。

スワープの言葉を借りれば、脳(司令室)が正しく機能するためには、情報を届けるインフラ——つまり体全体——が整っている必要があります。司令室だけ直しても、回線が断絶していたら意味がない。

オステオパシーが「頭痛なのに体を触る」理由は、ここにあります。

頭痛でお悩みの方へ

「検査では異常なし」と言われた頭痛は、体の構造的なアンバランスが積み重なった結果であることが少なくありません。薬で対処しながらも「根本的に何とかしたい」と思っている方——一度、体全体を評価する視点から診てみませんか。

頭痛の詳しい症状ページはこちら。初回のご相談はLINEからでも受け付けています。

ご予約・ご相談

京都オステオパシーセンターOQ|阪急大宮駅 徒歩2分
完全予約制・1階(院長:坂田)

オンライン予約はこちら

執筆:坂田雄亮(院長)
参考:D.F.Swaab 著『We Are Our Brains』(2014)

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この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

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