不妊と進化医学——「妊娠しにくい体質」の背景を読む

不妊に悩む方に「体が妊娠に適していない」という表現を使う人がいます。でも、進化医学の視点から見ると、それはかなり一面的な見方です。


生殖は「余裕があるときに起動するシステム」

進化的に見ると、妊娠・出産は「身体に十分な余裕があるとき」にのみ起動するよう設計されています。飢饉・戦争・極度のストレス状態では排卵が止まる——これは今でも観察される現象です。身体にとって「今は子どもを育てる状況ではない」という判断です。

この設計は残酷に見えますが、進化的には合理的です。十分なリソースがない状況での妊娠・授乳は母子両方のリスクを高めます。


現代の「余裕のなさ」が生殖系に伝わる経路

HPA軸(慢性ストレス)経由:コルチゾールが慢性的に高い状態では、性腺刺激ホルモン(LH・FSH)の分泌リズムが乱れます。「ライオンから逃げている状態で妊娠する必要はない」という生物学的ロジックです。

甲状腺ホルモン経由:慢性ストレス・睡眠不足・低栄養は甲状腺機能に影響します。甲状腺ホルモンは基礎代謝だけでなく、卵巣機能・子宮内膜の成熟にも関与します。

炎症経由:超加工食品・腸内環境の悪化・慢性的な組織の炎症は、着床のための免疫環境を乱します。子宮内膜への着床は「免疫系の精密な協調」が必要なプロセスです。


「原因不明の不妊」の多くはここにある

不妊の検査で「特に異常がない」と言われた方に、進化医学は別の問いを立てます。「身体は今、妊娠に余裕があると感じているか」

慢性的な交感神経優位・睡眠不足・腸内環境の乱れ・骨盤内の血流パターンの問題——これらは通常の不妊検査では引っかかりません。でも生殖系の機能に影響しています。


OQが妊活中の方に関わるとき

妊活中の方に、OQは骨盤底・仙骨・腸間膜の状態、横隔膜の動き、自律神経のバランスを評価します。骨盤内の血流パターンを整えること、慢性的な交感神経優位状態を緩和すること——「身体が妊娠に余裕を感じられる状態に近づける」というアプローチです。「不妊治療を補助する」という位置づけで、不妊専門クリニックとの併用を推奨しています。

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この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

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