2型糖尿病・肥満と「倹約遺伝子」——現代食と石器時代の代謝の衝突

日本人の糖尿病患者数は約1,000万人、予備群を含めると約2,000万人とも言われます。肥満・メタボリックシンドロームもこの数十年で急増しました。

なぜ私たちの身体は現代の食事にこれほど脆弱なのでしょうか。遺伝学者のジェームズ・ニールが1962年に提唱した「倹約遺伝子仮説」が、その答えを持っています。

飢餓と飽食——300万年のリズムが崩れた

狩猟採集時代の食生活は「食べられるときに食べる」サイクルでした。獲物が取れない日、嵐が続く日、季節的な食料不足——飢餓は常にそこにありました。

この環境で生き延びるために、人類は「余剰カロリーを脂肪として効率的に蓄積する」遺伝子を進化させました。インスリンの感受性を高め、わずかな糖質から素早く血糖を上げ、脂肪として保存する——これが「倹約遺伝子」の仕組みです。

進化的事実:日本人を含む東アジア人は、同じBMIでも欧米人より2型糖尿病になりやすいことが研究で示されています。これは農耕・漁労中心の食生活が続いてきた東アジアで、倹約遺伝子がより強く選択された可能性を示します。「同じ食事をしても太りやすい・糖尿病になりやすい体質」は努力不足ではなく、進化的な背景を持っています。

問題は「遺伝子」ではなく「環境の激変」

倹約遺伝子そのものは問題ではありません。飢餓が常在する環境では、これは生存上の強みでした。問題は環境の側が激変したことです。

精製された糖質・脂質が24時間365日手に入り、身体活動が激減し、慢性ストレスがインスリン抵抗性をさらに高める——これらが重なったとき、「倹約遺伝子」は一転して慢性疾患のリスク因子になります。

OQのアプローチ

2型糖尿病・肥満の治療は内科・内分泌科が担います。OQのオステオパシーでは、膵臓・肝臓・腸管への内臓オステオパシー(内臓の可動性・循環の改善)、自律神経の安定化(血糖調節に関わる迷走神経への介入)、睡眠・ストレス応答の改善を通じた補助的サポートを行います。

よくあるご質問

糖尿病は遺伝ですか?

遺伝的素因はありますが、2型糖尿病の多くは生活習慣の影響が大きく、遺伝だけで決まるものではありません。同じ遺伝子を持っていても、食事・運動・睡眠・ストレス管理で発症を大幅に予防・遅延できます。

日本人はなぜ糖尿病になりやすいですか?

日本人は欧米人に比べてインスリン分泌能力が低い傾向があります(膵β細胞の分泌予備能の違い)。同じ体重・食事量でも血糖が上がりやすく、糖尿病に移行しやすいと言われています。これは東アジアの農耕中心の食文化への適応と関連する可能性があります。

肥満は意志の弱さですか?

違います。現代の食環境(高カロリー・高糖質・高度に加工された食品の氾濫)は、300万年かけて飢餓に適応した代謝システムにとって「想定外」です。肥満を個人の意志の問題として捉えるのは、進化的な文脈を無視した見方です。環境の設計を変えることの方が、意志力より効果的です。

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