「先生、手術してもらったんです。病変も全部取ってもらったはずなのに、まだ痛くて」
子宮内膜症のある方からこういう話を聞くことがあります。腹腔鏡手術を受けた。専門医にちゃんと切除してもらった。それでも骨盤の深い痛みが残っている、性交痛が消えない、月経がくるたびに怖い——。
これは「気のせい」でも「術者の問題」でもないことがほとんどです。中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)という、神経系レベルの変化が起きているかもしれません。
痛みを「覚えてしまった」神経系
長期間にわたって痛みの信号を受け続けると、脊髄や脳幹の神経細胞が変化します。痛みの「ボリューム」を上げる方向に、回路が書き換わってしまうのです。
普通なら痛みとして感じないような刺激が「痛い」と感じられる。痛みが広がる。触れるだけでも辛い——これが中枢性感作です。子宮内膜症で何年も月経のたびに強い炎症が繰り返されると、この変化が起きることがあります。
火災報知器のたとえで言うと:原因の「火」(病変)は取り除かれた。でも報知器の回路そのものが、鳴りやすいように変わってしまっている。
もう一つの理由——筋膜が「覚えている」
手術後に痛みが続くもう一つの理由は、筋膜の変化です。
慢性的な炎症と手術そのものによって、骨盤内の筋膜(結合組織の膜)が硬くなり、癒着が生じることがあります。子宮・卵巣・腸・膀胱はそれぞれ筋膜でつながっており、その動きが制限されると血液とリンパの循環が滞ります。
循環が悪くなると、炎症性の物質が骨盤内に溜まりやすくなる。それがまた痛みの原因になる——悪循環です。
病変はなくても、組織の「記憶」が残っていることがあります。オステオパシーでは「体は経験を記録する」と考えますが、これはまさにそういうことです。
自律神経が「緊張モード」のまま
もう一つ見逃せないのが、自律神経の状態です。
長期間の痛みとストレスは、交感神経(いわゆる「闘争・逃走」の神経)を慢性的に優位にします。交感神経が優位な状態では、骨盤内の血管が収縮し、血流が低下します。そしてこれが、炎症の収まりにくさ、組織修復の遅さにつながります。
手術が成功しても、自律神経の状態が変わらなければ、体は「まだ危険な状態」として反応し続けることがあります。
OQで何をするか
OQに子宮内膜症の方が来院されたとき、施術でアプローチするのは主に次の3つです。
一つ目は、骨盤内の内臓の動きの評価と解放。子宮・卵巣・腸・膀胱それぞれの動きの制限を、手を通じて感じ取り、穏やかに解放していきます。筋膜の癒着が緩むことで、循環が改善します。
二つ目は、横隔膜と骨盤底の関係。呼吸のたびに横隔膜が動くことで、骨盤内にポンプのような圧力変化が生まれています。横隔膜の制限を解放することは、骨盤環境の改善に直接つながります。
三つ目は、頭蓋仙骨療法による自律神経へのアプローチ。頭蓋骨・仙骨・脊椎を通じて、非常に穏やかな接触で自律神経のバランスに働きかけます。体が「安全モード」に入りやすくなると、骨盤内の血流が改善し、組織の修復が促されやすくなります。
手術は「終わり」ではなく「始まり」
手術で病変を取り除くことには意味があります。でも、病変が育ちやすかった体の「環境」——免疫の乱れ、循環の停滞、自律神経の過緊張、筋膜の硬さ——は、手術だけでは変わらないことがあります。
「手術したのに」と感じている方の体が、何かを訴えているとしたら、それはその「環境」のことかもしれません。
OQは婦人科医療の代わりにはなれません。でも、婦人科治療と並行して、体の土台を整えるお手伝いができると考えています。
子宮内膜症のことで気になることがある方は、お気軽にご相談ください。
→ 関連ページ:子宮内膜症とオステオパシー

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