他の哺乳類に、お産のボランティアが入ることはほとんどありません。チンパンジーも、馬も、ほぼ独力で産まれてきます。なぜ人間の出産だけがこんなに大変なのか。
産科的ジレンマとは何か
直立二足歩行への移行で骨盤は歩行向きに変形し、骨盤出口が相対的に小さくなった。同時に脳の急拡大で頭蓋骨が大きくなった。「出口が狭くなったのに、出てくる頭が大きくなった」——これが産科的ジレンマ(Obstetric Dilemma)です。
「未熟児」として産まれることが解決策だった
進化がたどり着いた解決策は、赤ちゃんを「早めに産む」ことでした。人間の新生児は他の哺乳類と比べて極めて未熟な状態で産まれます。頭蓋骨の縫合もまだ閉じていない(大泉門・小泉門)。骨盤出口を通過できるサイズで産まれ、産後に急速に脳を発育させる——これが産科的ジレンマへの進化的回答です。その結果、長期の育児・共同体によるサポートが不可欠になりました。人間が社会を作り協力する種になったことと、難産は深いところで繋がっています。
コリック(乳児疝痛)との関係
難産〜吸引分娩・鉗子分娩を要する出産では、頭蓋骨縫合部や頭蓋底への外力が加わることがあります。頭蓋底近くを通る迷走神経が影響を受けると、消化器系・睡眠・泣き声のパターンに影響が出ることがある。コリック(原因不明の激しい泣き)の一因として、出産時の頭蓋骨圧迫と迷走神経の関係が指摘されています。
OQが赤ちゃんを診るとき
コリック、向き癖、頭のかたちで来られた赤ちゃんに、OQは頭蓋骨縫合、頭蓋底、仙骨周囲の状態を評価します。「出産の記憶が身体に残っている」——それを読み取り、参与することがOQの小児ケアの出発点です。
人間の出産が大変なのは、産む人が弱いからでも赤ちゃんが大きすぎるからでもありません。直立二足歩行と脳拡大が同じ骨盤の中でぶつかった結果です。
OQ進化医学コラムシリーズ → シリーズ一覧
コメント