なぜ5回目から変わるのか——治療における「複利効果」の話

「3回通ったけど、あんまり変わらないんです」

正直に言います。この言葉は、よく聞きます。

そして正直に言います。その気持ちは、わかります。

痛い。つらい。早くなんとかしたい。1回で劇的に変わることを期待して来る。でも1回目、少し楽になった気がする。2回目、戻った気がする。3回目、やっぱり変わらない気がする。

——もう、やめようかな。

ここで離脱する方が、実はとても多い。

でも、これはとてももったいないことなんです。

目次

1円が1,000万円になる話

ちょっと変な話をさせてください。

「今すぐ300万円もらえる」のと、「1円を毎日2倍にしていく」のと、どっちを選びますか?

多くの人が300万円を選びます。1円じゃ話にならない、と。

でも実際に計算すると、1円を毎日2倍にしていくと、31日目には約1,073万円になります。

ただし。29日目の時点では、まだ300万円に届いていない。

つまり、全体の93%の期間、ペニーは負けている。最後の2日間で一気に逆転する。

これが「複利効果」(The Compound Effect)と呼ばれるものです。

身体の回復も、複利で動いている

治療を受けたとき、身体の中では確実に変化が起きています。

でも、1回目の変化は小さい。自分では感じられないかもしれない。2回目も。3回目も。

筋膜の緊張が少しずつゆるむ。内臓の動きが少しずつ回復する。自律神経のバランスが少しずつ整う。身体の中で「微調整」が積み重なっていく。

でも、それが「実感」として表に出てくるのは、ある閾値を超えてからなんです。

僕の臨床経験で言うと、その閾値はだいたい5回目以降に来ることが多い。

「あれ?そういえば最近、あの痛みが気にならない」

「そういえば昨日、ぐっすり眠れた」

「朝起きたとき、身体が軽い」

突然のブレイクスルー。でもそれは突然じゃない。1回目からずっと積み重なっていた変化が、ようやく表面に出てきただけ。

毎日250キロカロリーの差が、30kgの差になる

もう一つ、わかりやすい例があります。

同じ体型、同じ年収、同じ生活の3人がいます。一人は何も変えない。一人は毎日ほんの少しだけ良い選択をする。一人は毎日ほんの少しだけ悪い選択をする。

31ヶ月後、良い選択をした人と悪い選択をした人の体重差は約30kg

1日の差は、たった250キロカロリー。おにぎり1個分くらい。

身体って、そういうふうにできています。小さな変化の蓄積が、ある時点で目に見える大きな差になる。良い方にも、悪い方にも。

なぜ最初の3回で「効いてない」と感じるのか

現代の僕たちは、「即効性」に慣れすぎています。

頭痛がしたら鎮痛剤を飲む。15分で効く。検索すれば答えが出る。0.3秒で出る。Amazonで注文すれば翌日届く。

この「すぐに結果が出る」世界に慣れていると、身体の回復のペースが異常にゆっくりに感じる。

でも、身体は鎮痛剤のようには動かない。身体はAmazonじゃない。

身体は、生きものです。

筋膜が再編成されるには時間がかかる。神経系がリセットされるには繰り返しが要る。内臓の動きが正常化するには、何度も何度も「正しい方向」へのきっかけを与え続ける必要がある。

そしてもう一つ。以前書いたことの繰り返しになりますが、多くの人は自分の身体を信頼していない

自分の身体がもっともコントロールできるはずのものなのに、それを信じられない。だから、治療そのものも信じられない。「効いているはずがない」と、身体が変わり始めているのに、頭で否定してしまう。

身体の中のリップルエフェクト

面白いのは、身体の変化は「一か所だけ」では終わらないことです。

肩の緊張がゆるむと、呼吸が深くなる。呼吸が深くなると、自律神経が落ち着く。自律神経が落ち着くと、胃腸の動きが回復する。胃腸が回復すると、睡眠の質が上がる。睡眠の質が上がると、朝の痛みが減る。

一か所の小さな解放が、全身に波及していく。

逆もまた然りです。一か所の小さな制限が、長い時間をかけて全身に影響を広げていく。頭痛の原因が骨盤にあったり、膝の痛みの原因が横隔膜にあったりするのは、このリップルエフェクトのせいです。

オステオパシーが「痛い場所だけ」を触らない理由は、ここにあります。

だから、回数を決める

OQでは、初回の施術のあとにRe・Formという治療計画を一緒に立てます。多くの場合、6〜10回。

なぜこの回数なのか。

1〜3回は、身体に「こっちの方向だよ」ときっかけを与える期間。表面的には変化が見えにくい。

4〜6回で、身体の中の変化が少しずつ「実感」として表に出始める。ここでブレイクスルーが起きることが多い。

7〜10回で、変化が安定する。戻りにくくなる。「いい状態が普通」になる。

だらだら通い続けるための回数じゃありません。終わりを目指すための回数です。

「もうちょっと続けてみませんか」と言いたいだけの記事です

この記事で伝えたいのは、結局これだけです。

1〜3回で「変わらない」と感じたとしても、身体の中ではすでに変化が始まっている。

今やめるのは、31日間のペニーを29日目で手放すのと同じかもしれない。

もちろん、合わないと思ったら無理に続ける必要はありません。それは正直にお伝えします。

でも、もし少しでも「何かが変わりかけている気がする」と感じているなら——あと2〜3回、身体を信じてみてほしい。

ブレイクスルーは、その先にあることが多いから。


関連ページ:
📖 OQが最初にお伝えしたいこと
🔧 治療プラン Re・Form
📖 初めての方へ

この記事を書いた人

坂田雄亮|京都オステオパシーセンターOQ 院長
英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。「身体が持っている回復力を信頼する」という臨床哲学のもと、18年間の臨床経験を持つ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次