「疲れが取れない」「朝がどうしても起きられない」——これを「意志が弱いから」「精神的に弱いから」と言う人がいますが、進化医学は全く別のことを言っています。
概日リズムは20億年前に始まった
体内時計(概日リズム)は細菌にも存在します。地球上の生命が昼夜サイクルと共に進化してきた結果、約24時間の周期リズムは生命の根幹に組み込まれました。ノーベル賞(2017年)もこの概日リズムの分子メカニズムに授与されています。
人間の概日リズムは、明暗のサイクルによって調整されます。光を受けると「昼だ」とシステムに知らせる。暗くなると「夜だ」という信号が出る。これで睡眠・覚醒・体温・ホルモン分泌・免疫活動のタイミングが決まります。
現代の光環境が「夜を消した」
人工照明が普及したのは約120年前。LED・スマートフォン・夜間照明が日常化したのはここ30年以内です。20億年かけて最適化された概日リズムが、30〜120年の光環境の変化に対応できていません。
特に問題なのはブルーライトです。太陽光に多く含まれる短波長光(ブルーライト)は、脳内の視交叉上核に「今は昼だ」という信号を送ります。夜にスマートフォンやLED画面を見ることは、脳に「夜なのに昼だ」という矛盾した信号を与え続けることです。
その結果:メラトニン分泌が遅れる、入眠が困難になる、睡眠の質が下がる、コルチゾール分泌リズムが乱れる、免疫サイクルがずれる。これが慢性疲労・朝の倦怠感・集中力低下の背景にある進化的ミスマッチです。
「睡眠負債」という概念
睡眠は単に「休む時間」ではありません。脳のグリンパティック系(老廃物除去システム)が最も活性化するのは深い睡眠中。免疫細胞の記憶形成・成長ホルモン分泌・細胞修復が睡眠中に集中しています。
睡眠時間が不足すると、これらのプロセスが中断されます。1日の不足は「翌日寝れば取り戻せる」が、週単位・月単位の睡眠不足は蓄積します。これが「睡眠負債」であり、慢性疲労の主要因のひとつです。
OQが慢性疲労を診るとき
慢性疲労で来られた方に、OQは睡眠の質・概日リズムの状態・自律神経のバランス・横隔膜の動きを一体として評価します。慢性的な交感神経優位状態(軸5)と概日リズムの乱れは互いに悪循環を作ります。横隔膜・迷走神経・仙骨を通じたアプローチで、自律神経のリズムを取り戻す手伝いをします。
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