子宮摘出手術のあと、体に何が起きているのか——腹部の痛み・浮腫・腸の動きとオステオパシー

「手術はうまくいきました」——そう言われてホッとした直後から、別の問題が始まる方がいます。

下腹部が重い。ガスが溜まる。脚がむくむ。傷口の周辺が引っ張られる感じがする。腸が「目覚めない」ような感覚が何週間も続く——。

婦人科のフォローアップでは「問題なし」と言われる。でも体は確かに何かを訴えている。そういう方が、オステオパシーに来ることがあります。

目次

子宮摘出後の体で起きていること

子宮は骨盤の中心にあって、前は膀胱、後ろは直腸、上は腸、下は骨盤底——あらゆるものと膜・靭帯・結合組織でつながっています。その子宮が取り除かれる、ということは、骨盤内の「引力のバランス」が変わることを意味します。

術後に起きやすい問題として、主に4つあります。

① 瘢痕と癒着
体は傷口を修復する過程で瘢痕組織をつくります。これが周囲の臓器・膜と「くっつく」と、腸が引っ張られたり、膀胱の動きが制限されたり、腰痛の原因になることがあります。腹腔鏡でも開腹でも、程度の差はあっても癒着は起きます。

② 腸の動きの低下
麻酔・手術操作・術後安静の影響で、腸の蠕動運動が一時的に落ちます。多くは1〜2週間で回復しますが、腸間膜の緊張や癒着が残ると、ガスが溜まりやすい・便秘が続く状態が長引くことがあります。

③ リンパ・体液循環の低下
骨盤内のリンパ節が術中に操作されると(特に広範子宮全摘・リンパ節郭清を伴う手術)、下半身のリンパ循環が落ちることがあります。また術後に動けない時期が続くことで、下腹部・脚の浮腫が生じやすくなります。

④ 仙骨・骨盤底のバランス変化
子宮は子宮仙骨靭帯・基靭帯などで仙骨と骨盤壁に連結されています。摘出後、これらの靭帯の「引力」が消えることで、仙骨の動きや骨盤底筋の機能に変化が生じます。これが腰痛や尿漏れ、腟の違和感につながることがあります。

43歳、腹腔鏡子宮全摘後の症例

(個人が特定されないよう複数の事例を組み合わせています)

43歳女性。子宮筋腫による過多月経のため、腹腔鏡下子宮全摘術を受けた。術後経過は「問題なし」と婦人科から言われたが、術後8週を過ぎても下腹部の重さと右下腹部の引っ張り感が残存。またガスが溜まりやすく、午後になると腸が張って仕事に集中できない。脚も夕方になるとむくむ。「体のエンジンがかかっていない感じ」と表現されていた。

初診時の触診所見:

  • 右下腹部(盲腸〜上行結腸の腹膜)の著明な緊張
  • 横隔膜の固さ(呼吸時の動きが左右非対称)
  • 仙骨の動きの制限(右への偏位傾向)
  • 骨盤底の過緊張(腹圧をかけると下腹部が硬直)

施術の方針:直接的な手術部位ではなく、その周囲の「膜のつながり」を整えることから開始。横隔膜の動きの回復→腸間膜の緊張解放→仙骨のバランス→骨盤底、の順で進めた。

3回の施術後の変化:「ガスが自然に抜けるようになった」「午後の腸の張りが明らかに減った」という報告。右下腹部の引っ張り感は半減。6回目には「体がようやく動き始めた気がする」と。

浮腫については改善が緩やかだったが、骨盤底の緊張が取れてきた4回目以降から「夕方の脚の重さが少し楽になってきた」という変化が出てきた。

「手術は成功」でも体が追いついていない、ということがある

婦人科の術後フォローは、主に「傷口が治っているか」「感染はないか」「血液検査の数値」を見ます。それは当然必要なことです。でも「膜の動き」「腸の自律的な蠕動」「骨盤内のバランス」は、通常の術後検査では評価されません。

体は手術という大きな出来事のあと、新しい構造に「適応」しようとします。その適応がスムーズにいかないとき、腸の不調・浮腫・骨盤の痛みという形で症状が出ます。

オステオパシーは、その「適応」を助けるための手技です。手術の結果を否定するのではなく、体が新しい状態に無理なく馴染めるよう、丁寧に関与します。


子宮摘出術後のケアについては、子宮摘出術後のオステオパシーケアのページもご覧ください。

京都オステオパシーセンターOQ 院長・坂田雄亮(BSc Ost)が担当します。ご予約はオンライン予約または075-822-3003まで。

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この記事を書いた人

京都オステオパシーセンターOQ 院長。英国スウォンジー大学 BSc(Ost) オステオパシー学士。小児・妊婦・皮膚・内臓・頭蓋オステオパシーを専門とする。

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