「炎症」という言葉は、多くの場合「悪いもの」として語られます。抗炎症薬で消す、炎症を抑える食事を摂る——そういう文脈で使われます。
でも進化医学は「炎症は本来、治癒の始まりだ」と言います。問題は炎症が「消えない」ことであり、その原因は炎症そのものではなく、炎症を引き起こし続ける現代環境にあります。
急性炎症と慢性炎症——同じシステムの全く異なる表れ
急性炎症は身体の最も精巧な治癒メカニズムのひとつです。怪我・感染があると、免疫細胞が集まり、血流が増え、組織の修復が始まります。発熱・腫れ・赤み・痛みは、この修復プロセスが進行中であることを示します。これを薬で闇雲に抑制することは、工事現場の人夫を追い払うようなものです。
慢性炎症は、本来数日で終わるはずのこのプロセスが、低レベルで延々と続いている状態です。明確な怪我や感染がなくても、免疫系が「常に軽い緊急態勢」にある。これが現代の多くの慢性疾患の共通した基盤です。
進化的事実:慢性炎症は心臓病・2型糖尿病・うつ病・アルツハイマー病・がんなど、現代の主要な慢性疾患と関連しています。炎症マーカー(CRP・IL-6など)は、狩猟採集民と比較して現代の都市生活者で有意に高いという研究があります。超加工食品・座りすぎ・睡眠不足・社会的孤立——これらはすべて炎症を慢性的に引き起こします。
なぜ現代環境は慢性炎症を引き起こすのか
腸内細菌叢の破壊。超加工食品・抗生物質の多用・食物繊維不足が、腸内細菌の多様性を低下させます。腸粘膜バリアが弱まると(リーキーガット)、内毒素(LPS)が血液中に漏れ出し、全身性の低レベル炎症を引き起こします。
過剰な精製糖・オメガ6脂肪酸。現代の食生活では、炎症を促進するオメガ6脂肪酸(植物油)が過剰で、炎症を抑制するオメガ3脂肪酸が不足しています。血糖の急激な変動も炎症性サイトカインを刺激します。
睡眠不足。睡眠中に炎症性サイトカインの産生調整と組織修復が行われます。7時間未満の睡眠が慢性的に続くと、炎症マーカーが上昇します。
OQのアプローチ:「炎症を消す」のではなく「炎症を起こさない身体に」
OQのアプローチの核心は「炎症を抑制する」ことではなく「炎症を必要としない身体の状態をつくる」ことです。腸管の機能改善(内臓オステオパシー)、自律神経の副交感神経優位への移行、リンパ循環の促進——これらが慢性炎症の「燃料」を減らします。
また「痛みは炎症の証拠ではない」という視点が重要です。中枢性感作(慢性疼痛)では、組織の炎症がなくても痛みシグナルが持続します。「炎症を消せば痛みが消える」という単純な図式から離れることが、治らない痛みへの最初の一歩です。
よくあるご質問
抗炎症食は効果がありますか?
食事は慢性炎症への重要な介入点です。地中海食(オリーブオイル・魚・野菜・全粒穀物が中心)は最もエビデンスが蓄積された抗炎症パターンです。超加工食品・精製糖・トランス脂肪酸を減らし、食物繊維と発酵食品を増やすことが基本です。
CRP値が高いと言われました。何をすればいいですか?
まず感染症・自己免疫疾患など急性の原因がないか、主治医と確認してください。慢性的な軽度上昇(高感度CRP:1〜3mg/L)であれば、生活習慣の改善(睡眠・運動・食事・禁煙・体重管理)が最も重要な介入です。
オステオパシーは慢性炎症に何ができますか?
腸管の可動性改善・リンパ循環の促進・自律神経の調整を通じて、慢性炎症の「燃料」となる腸内環境の乱れ・リンパ鬱滞・慢性ストレス応答を緩和する補助的な役割が期待できます。薬物療法・生活習慣の改善と組み合わせてご活用ください。