2型糖尿病・肥満はなぜ増えたのか——「倹約遺伝子」と現代の食環境のミスマッチ

日本人の糖尿病・糖尿病予備軍は合計で2000万人を超えると言われています。この数字は1970年代と比べて約10倍です。遺伝子はこの50年でほとんど変わっていない。なぜこれほど急増したのでしょうか。

進化医学は「倹約遺伝子(Thrifty Gene)仮説」という答えを持っています。

人体は「飢えに備える」よう設計された

遺伝学者ジェームズ・ニールが1962年に提唱した倹約遺伝子仮説によれば、人類進化の大部分は「食べ物が少ない時代」に行われました。「飽食期と飢餓期」が繰り返される環境に適応した身体は、食べられるときに最大限エネルギーを脂肪として蓄積し、血糖を効率よく取り込むよう最適化されました。インスリン抵抗性を一時的に高めて脂肪組織を優先してブドウ糖を蓄える——これが「倹約遺伝子」の正体です。

進化的事実:日本人・東アジア人は欧米人より少ない体脂肪率で糖尿病を発症しやすいことが知られています(「Asian Phenotype」)。BMI正常でも内臓脂肪が蓄積しやすい体質は、飢餓への適応が強かった集団の特徴です。現代の「飢えのない豊食環境」では、この適応が逆効果になっています。

現代食環境との激突

精製糖の急増。狩猟採集時代の糖質摂取は、季節の果実・根菜・蜂蜜に限られていました。現代の超加工食品・清涼飲料水は血糖を急激に上昇させる糖質を絶え間なく供給します。

座りすぎ。1日15〜20km歩いた祖先と異なり、現代人は座ったまま大量のカロリーを消費せずに過ごします。筋肉がブドウ糖を消費しない状態での血糖上昇は、インスリン抵抗性を悪化させます。

概日リズムの乱れ。夜間に食事をすることは進化史上ほぼなかった行動です。夜間の血糖処理能力は昼間より低く、夜食・深夜の食事が代謝ミスマッチを拡大します。

OQのアプローチ

糖尿病・肥満の主治療は内科・内分泌科が担います。OQが補助できるのは、インスリン感受性と関わる以下の側面です。膵臓・肝臓・腸の内臓可動性の改善(内臓オステオパシー)。自律神経バランスの調整(副交感神経優位化でインスリン感受性が改善)。慢性コルチゾール高値の緩和(HPA軸リセット)。これらは薬物療法・生活習慣改善の補助として機能します。

よくあるご質問

日本人はなぜ欧米人より糖尿病になりやすいのですか?

日本人・東アジア人はインスリンを分泌する膵臓のβ細胞の機能予備量が欧米人より少ないとされています。飢餓への適応が強かった集団は少ないインスリン分泌でも効率よくエネルギーを蓄積できる体質を持ちますが、豊食環境では膵臓への負担が早期に限界に達します。

糖質制限は有効ですか?

多くの研究で2型糖尿病・肥満に有効とされています。ただし個人の状態・目標・継続可能性に応じた調整が重要です。主治医・管理栄養士と相談しながら取り組むことをお勧めします。

運動はどれくらい必要ですか?

進化医学的に見ると「座りすぎを減らすこと」が最初のステップです。1時間に1回立ち上がる、食後15〜30分歩くだけでも血糖値への効果があります。その上で週150分以上の中強度有酸素運動と週2回以上の筋力トレーニングが推奨されています。

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