これはひとつの記録です。
30代女性の方が初めてOQのドアを叩いたのは、「PCOSと言われて三年になります。ピルは飲みたくないです」という一言からでした。その方が25回通い、生理が安定し、最終的に自然妊娠に至るまでの経緯を、個人特定を避けた形で記録します。

【診察データ(初回)】
30代女性 / PCOS診断3年 / 婦人科フォロー中
主訴え:生理不順(3~4か月に一度)、ニキビ(額・あご・胸)、動いたらすぐ疲れる、体重が落ちにくい
初回評価所見:
・ 骨盤左側傾斜(腸骨稜左側が高い)
・ 仙骨右側の可動制限
・ 横隔膜可動性大幅低下
・ 左卵巣周囲の筋膜緊張
・ 頭蓋基部の緊張
・ 仙骨S2レベルの伸展制限
※症例は複数事例を組み合わせた内容です。特定の患者さんを示すものではありません。
PCOSを「体全体」から見るということ
PCOSの根本にあるのはインスリン抵抗性です。大量のインスリンが卵巣に作用しアンドロゲン過剰と排卵障害をもたらします。慢性的な副腎ストレスがこれを悪化させ、慢性炎症と腸内環境の乱れが悪化させます。オステオパシーはこの環境全体にアプローチします。
25回の記録
全身評価と基盤づくり
骨盤左側傾斜と仙骨可動制限を確認。各隔膜(骨盤隔膜/横隔膜/鞍隔膜など)がうまくシンクロしていない状態。第1回は横隔膜・胸椎上部・仙骨へのアプローチ。施術後「呼吸でお腹が動く感じがして、した」。
第2回:骨盤左右差へのアプローチ。仙骨の可動性が少し回復。
内臓アプローチ開始
骨盤基盤が少し安定したところで卵巣・子宮への内臓アプローチに移行。左卵巣周囲の筋膜緊張が著明。施術後「少し下腹が軽くなり、凹んだ!!」。
第4回後:少量の出血があった。「無排卵ですね」と婦人科で言われたが、体が気づき始めているサインかもしれないと共に考える。
変化の第一歩
第7回:人生で初めて一ヶ月以内に生理がきた。量は少ないが「何か変わった気がする」とおっしゃった。初めてニキビの数が少し減ったことに気づいたと言う。
この頃、仙骨の可動性が大幅に回復していた。
頭蓋仙骨系と副腎アプローチ
骨盤・内臓の安定を確認した上で、頭蓋仙骨リズムを整える作業に移行。視床下部–下垂体軸(PCOSの中枢)への間接的アプローチ。
第11回:生理前に排卵の気配が感じられた。正常な排卵サイン。
排卵確認・ニキビ減少
婦人科で卵巣の囊胞が減少していたとの報告。
ニキビが大幅減少。「化粧品を変えたわけではないのに」と不思議そうにおっしゃっていた。
2週間に1回ペースに移行。
生理周期の安定化
連続3サイクル、定期的に排卵を確認。「最近体が整っている感じがする」「朝起きるのが少し楽になった」。
仙骨および骨盤可動性は初回比大幅改善。各隔膜が自然に動くようになった。
妊娠希望を伝える
第21回:婦人科で「人工授精になるね」と言われていたが、もう少し頑張って、自然妊娠したいと医師に伝えたこと伝えてくださった。
骨盤・内臓環境をさらに整える方針で通院継続。
自然妊娠
第24回:「実は妊娠したかもしれないんです」と小声で話しながら来てくださった。婦人科で確認したがまだ詳しく確認していないという。
第25回:妊娠正常、婦人科での管理に移行。人工授精なしの自然妊娠でした。「ありがとうございました」と言っていただいた。
この方に学んだこと
25回という数字だけ見ると長く感じるかもしれません。でもPCOSは3年かけて形成された状態でした。骨盤、卵巣周囲の内臓、横隔膜、頭蓋仙骨系、そして血糖安定のための食事——この全体を一本の筋として見たことが、ホルモンが整う「下地」になったのだと思っています。
PCOSとオステオパシーについては、PCOS症状ページもご参照ください。生理痛・PMS・不妊ページもご覧ください。
執筆:坂田雄亮(院長)
参考:Cory Ruth & Dr. Jolene Brighten 『PCOS Is My Power』(2026) / Webb, K. 『Polycystic Ovary Syndrome』(2021)
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