変形性膝関節症 お皿の周囲が痛くなる理由

はじめに

変形性膝関節症の患者さんから「お皿の周りが痛い」という訴えをよく耳にします。膝の痛みというと、多くの方は膝の内側や外側の痛みを想像されがちですが、実は膝蓋骨(お皿)周囲の痛みも変形性膝関節症の重要な症状の一つです。

この痛みの背景には、膝蓋大腿関節という特殊な関節の構造と機能が深く関わっています。今回は、なぜお皿の周囲に痛みが生じるのか、その解剖学的・運動学的なメカニズムについて詳しく解説していきます。

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1. お皿の周囲が痛いのは膝蓋大腿関節痛?

膝蓋大腿関節とは

膝蓋大腿関節は、膝蓋骨(お皿)と大腿骨の滑車溝で構成される関節です。この関節は膝関節の一部でありながら、独特の動きと機能を持っています。膝の屈伸運動に伴って、膝蓋骨は大腿骨の滑車溝を滑るように移動します。

膝蓋大腿関節痛の特徴

膝蓋大腿関節痛の典型的な症状として以下があります:

  • 階段昇降時の痛み(特に下り)
  • 長時間の座位後の痛み(シアターサイン)
  • しゃがみ込み動作での痛み
  • 膝蓋骨周囲の圧痛

変形性膝関節症では、膝蓋大腿関節の軟骨も摩耗し、関節面の不整や骨棘形成が生じます。これにより、膝蓋骨の正常な滑走が阻害され、周囲の軟部組織に炎症や痛みが生じるのです。

2. 膝蓋大腿関節の負担をQアングルから考える

Qアングルとは

Qアングル(Quadriceps angle)は、大腿四頭筋の牽引方向を表す角度です。上前腸骨棘から膝蓋骨中央を結ぶ線と、膝蓋骨中央から脛骨粗面を結ぶ線がなす角度として定義されます。

正常値は男性で約13度、女性で約18度とされています。

Qアングル増大が膝蓋大腿関節に与える影響

Qアングルが増大すると、以下のような問題が生じます:

膝蓋骨の外側偏位 大腿四頭筋の収縮時に膝蓋骨を外側に引っ張る力が強くなり、膝蓋骨が外側に偏位しやすくなります。

関節面への不均等な圧迫 膝蓋骨の外側関節面に過度な圧迫が加わり、軟骨の摩耗が促進されます。

周囲軟部組織への負担 膝蓋骨の位置異常により、膝蓋靭帯や膝蓋支帯に過度な張力がかかります。

変形性膝関節症の進行に伴い、筋力バランスの変化や関節の変形により、Qアングルが変化することがあり、これが膝蓋大腿関節の症状を悪化させる要因となります。

3. 膝蓋大腿関節の痛みに関連するKnee-in Toe-out

Knee-in Toe-outとは

Knee-in Toe-outは、動作時に膝が内側に入り(knee-in)、つま先が外側を向く(toe-out)アライメント異常です。この動作パターンは、膝蓋大腿関節に大きな負担をかけます。

発生メカニズム

股関節機能不全 股関節外転筋群(中殿筋など)の筋力低下により、骨盤の安定性が低下し、大腿骨が内転・内旋します。

足関節の可動域制限 足関節背屈制限により、代償として膝が内側に入る動作が生じます。

大腿四頭筋の筋力不全 特に内側広筋の機能低下により、膝蓋骨の安定性が損なわれます。

膝蓋大腿関節への影響

Knee-in Toe-outの動作パターンでは:

  • 膝蓋骨の外側偏位が助長される
  • 膝蓋大腿関節の接触圧が増加する
  • 膝蓋骨周囲の軟部組織に不均等な負荷がかかる

これらの要因が重なることで、膝蓋大腿関節の痛みや機能障害が生じやすくなります。

治療・予防のアプローチ

股関節機能の改善 中殿筋や大殿筋の筋力強化により、骨盤と大腿骨の安定性を向上させます。

足関節可動域の改善 足関節背屈可動域を改善し、正常な動作パターンを促進します。

膝蓋骨の安定化 内側広筋の選択的強化により、膝蓋骨の位置を安定化させます。

終わりに

変形性膝関節症におけるお皿周囲の痛みは、単純な関節の摩耗だけでなく、複雑な運動学的要因が関与しています。Qアングルの異常やKnee-in Toe-outといった動作パターンの問題を理解し、包括的なアプローチで治療することが重要です。

膝蓋大腿関節の問題は、日常生活動作に大きな影響を与えるため、早期の適切な評価と治療が必要です。症状でお困りの方は、専門的な評価を受けることをお勧めします。

オステオパシーの観点からも、膝蓋大腿関節の問題は全身のバランスと密接に関連しており、局所的な治療だけでなく、全身の構造と機能を考慮した治療アプローチが効果的です。


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