腰椎椎間板ヘルニア

概要
成因と病態生理
椎間板にはほとんど血管がなく栄養は周囲組織からの拡散に依存しています。
髄核の含有水分は加齢とともに減少し、小児期では88%のものが老年期には66%まで低下します。(年を取ると身長が縮む原因)
長年の腰部椎間板への力学的負荷などによって、脱出した椎間板組織が神経根を圧迫することにより、腰部や下肢に痛みやしびれを引き起こされ、筋力低下などの加齢とともに罹患率が高まる代表的な退行性疾患とされています。
ウェイトリフティングや激しいスポーツによる力学的負荷によって、若年者にも誘発される危険性もあります。
また、近年では家族制集積性(遺伝性)や精神社会学的側面(不安,抑うつ,離婚etc...)や仕事に対する精神的な姿勢(仕事上のストレス,仕事に対する満足度,失業etc...)が深く関与していることも指摘されています。
●好発年齢は20~40歳の青壮年期 ●男女比は約2~3:1と男性の方が多い
●好発高位は腰椎4-5番間、次いで腰椎5-仙骨1番間で、この2椎間で80%を占める
●人口の約1%が罹患し、手術患者は人口10万人当たり年間46.3人という報告がある
●症状がなくても、76%の人にMRI上のヘルニアが認められる
症状
腰痛と片側の下肢痛が主訴であり、運動や労働によって悪化し、安静によって緩解する傾向があります。
検査
徒手的な検査方法としては下肢伸展挙上(SLR)テストやラセーグテストが有名ですが、個人的には椎間板ヘルニアの存在を特定するには他の要因(ハムストリングスの緊張や他の筋・筋膜性問題)も大きいため、鑑別的な信頼性は低いと考えています。
椎間板ヘルニアの存在の有無、高位診断にはMRIやCT診断が確実です。
治療
整形外科でもほとんどのケースが保存的治療が選択されます。
膀胱直腸障害(排尿と排便の失禁や停止)を呈する馬尾性圧迫症候群は不可逆性の後遺症を残す可能性があるため、早急な手術が必要です。
腰椎椎間板ヘルニアに対するオステオパシー的考察
重要な点として上記の成因と病態生理でも書いていますが、症状がない方でもMRIを撮ればほとんどの方にヘルニアや椎間板/椎間関節の変性が見つかります。
これはMRIやPETなどの高度診断機器が最も多い日本国(世界の3分の1が日本にあります)ではより顕著で、人間ドックなどで内臓の診断時などに腰痛がない方にもヘルニアが発見されています。
これも成因と病態生理で書いておりますが、近年ではヘルニアの変性だけが症状の成因として考えられるのではなく、社会心理学的な要因も考慮され、その影響は年々重要性を増しています。
また神経生理学的にも、
ヘルニアによる神経の圧迫=痛み/しびれ
と言うのはEBMが薄く、上記の臨床所見からも疑問視されだしています。
オステオパシー的にはヘルニアによる神経への構造的圧迫だけを考えるのではなく、筋・筋膜の問題や流体力学も考慮に入れます。
腰部の筋群のスパズムによる筋・筋膜性腰痛が起こり、疼痛回避姿勢を長期間強いられたために、結果椎間板に対して無理な圧力が加わり、椎間板ヘルニアが出現した可能性もあります。
この場合は、まず痛みがあり、そして痛みを避ける姿勢によって、結果的に椎間板ヘルニアとなったと考えられます。
また、筋・筋膜の異常緊張や病的な重心線の変化から、椎間板周囲組織に異常な圧力がかかり、静脈の鬱滞や椎間板への組織液の拡散が妨げられた為に、神経組織の栄養不足や酸素不足によって発痛物質が生じ、痛みやしびれと言った症状があたわれた可能性もあります。
オステオパシーでは上記の問題も考慮し、筋のスパズムを解除し、循環を回復させることによって、椎間板の変性は治らずとも、痛みやしびれと言った症状に良好な結果が現れることが多くあります。
また、飛び出た椎間板組織を押し戻すのではなく、「飛び出ている必要がなくなる」ように周囲の環境を整えてあげれば良いと考えます。
手術も重要な治療方法ですが、手術でヘルニアを取り除いても「ヘルニアが出る環境、椎間板に異常な圧力がかかる環境」がなくなる訳ではないため、手術だけでは再発の可能性も常につきまといます。
現に、1年以内の短期的な予後では手術の方が良好ですが、4年以上の長期的な予後は保存的治療と差がなくなると報告されています(Weber,1983)
馬尾性症候群や一日中変化しない激痛がある場合を除き、オステオパシーは非常に効果的な方法であると考えられます。








